IT投資の費用対効果はどうすれば上がるのか。調査で判明した、費用対効果が高い企業の共通点とは。
企業のIT投資額が伸びる中で、ROI(投資収益率)向上を追求する傾向が強まっている。
2024年12月10日に発表されたErnst & Youngの調査結果によると、「ある項目」に投資している企業の97%がROIの高さを実感しており、その成果は企業間で差があることが分かった(注1)。
この調査はさまざまな業界を代表する米国の上級ビジネスリーダー500人を対象として2024年9月24日〜10月4日に実施された。
Ernst & Youngの調査レポートによると、総予算の5%以上をAIに投資している企業は、AIへの投資額が総予算の4%以下の企業と比べて利益がプラスになる可能性がより高い。さらに業務効率や従業員の生産性、製品イノベーションなどさまざまな分野で、2024年6月と比較してROIが上昇したという。
Ernst & Youngのダン・ディアシオ氏(グローバルAIコンサルティングリーダー)は、インタビューの中で次のように述べた。
「当社の調査は、AIプロジェクトから価値を引き出す方法には学習曲線が当てはまることを示唆している。規模を拡大し、システムを適切に構成する方法を学べば学ぶほど、より多くのリターンを得ることができる」
この調査は、企業向けソフトウェアを提供するMicrosoftやSalesforce、Oracle、SAP、ServiceNowなどの企業がAI対応ツールを次々と市場に投入している状況を受けて実施された。特に最近は、ユーザーの代わりにタスクを実行できる「AIエージェント」が注目を集めている。
ServiceNowのジーナ・マスタントゥーノ氏(CFO《最高財務責任者》)は2024年12月3日、投資銀行UBS Group AGがアリゾナ州スコッツデールで開催した「グローバルテクノロジー&AIカンファレンス」で次のように語った。
「AIエージェントは休暇を取らず、人々が眠っている時も働く。そのため生産性と効率が大幅に向上する」(マスタントゥーノ氏)
調査会社のGartnerは、2025年の全世界のIT支出は5兆7400億ドルに達すると予測している。2024年比で9.3%成長で、AI投資がけん引しているという(注2)。
Ernst & Youngの調査によると、既にAIに投資している企業の34%が「2025年にはAIに1000万ドル以上の投資を計画している」と答えている。この割合は2024年6月の30%から増加している。
Ernst & Youngによると、AIはビジネスに好影響を与えているものの、企業のデータインフラがボトルネックになっているという。シニアビジネスリーダーの83%が、「データインフラがより強固であればAI導入はさらに進む」と回答しており、67%が「データインフラの欠陥が導入を妨げていること」を明らかにした。
「データインフラとデータ管理はAIの可能性を最大化するための重要課題だが、多くの企業が追い付いていない。これはAIエージェントが普及し、働き方に革命をもたらす中で特に重要だということが証明されるだろう」(ディアシオ氏)
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