「AI投資は金ドブ」論争の行方は? ROIの評価軸に変化の兆しCIO Dive

AIが急速に普及したした2024年、その勢いに反して高い費用対効果を得られた企業はごく一部だ。この現実を受けて、企業はAIの費用対効果の軸を見直している。

» 2025年02月10日 08時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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 IBMが2024年12月に発表した調査レポートによると、同年はほとんどの企業がAIに関する目標を達成したものの、AI投資への十分なリターンは得られなかったという(注1)。

企業はAIの効果をどう測るべきか?

 2400人以上のIT意思決定者を対象とした同調査によると、「2024年にAIプロジェクトが利益を上げた」と回答したITリーダーは回答者全体の47%だった。約3分の1が「損益分岐点止まり」と答え、14%が「損失を計上した」と答えた。

 こうした結果を受けて、企業はROI(投資収益率)の軸を見直し始めている。

 まず、ROIの目標を達成していない企業の大半は、「3年以内にコスト削減が実現する」と見込む。約44%はそれより早く、今後2年以内にROIが達成できると予想している。

 2024年、生成AIはリターンにつながりにくいと悪い評判が広まった。その結果、当初の期待感は失速し、企業の「幻滅」を招いた。一時はAI導入に一斉に飛び付いた企業も、現在ではその多くがコストの高さに目を向け、価値の高いユースケースを優先する慎重姿勢を取るようになった(注2)(注3)。

 その過程で、企業はROIの評価方法も見直している(注4)。

 IBMのレポートによると、ITリーダーがAI投資のROIを評価する際に最も重視した指標は「ソフトウェア開発の迅速化」「イノベーションの進展」「時間の節約」だった。一方で、定量的なコスト削減に重点を置くリーダーははるかに少ない。

 長期的に見ると、AIプロジェクトがコストの削減をもたらすとITリーダーは期待しているが、技術スタックに関連する費用は既に上昇している。2024年7月に発表されたForrester Researchの報告レポートによると、米国企業の約5社のうち4社が2023年にソフトウェアの値上げを経験した(注5)。ITリーダーの多くはこの原因はAIにあると考えており、AIによって2025年もソフトウェアコストが上昇すると予想する。

 2024年、多くのアナリストがAIコストの膨張リスクに警鐘を鳴らした。Gartnerは企業がAIの導入規模を拡大するにつれ、「AIコストの計算を1000%も見誤る可能性がある」と警鐘を鳴らす(注6)。

 Forrester Researchによると、IT部門の幹部は監査の強化や購買力の活用、適切な場合はオープンソースに切り替えることでコスト上昇を抑制しようとしている。しかし、契約の複雑さや将来のニーズ予測が不安要素となっている。

 2024年の生成AI関連の施策をどう管理するかという問題は企業にとって大きな負担になった(注7)。生成AIへの熱意が薄れて懐疑的な見方が広がる中で、それでも企業は前進を続けている。2024年8月に発表されたArize AIの報告レポートによると、「Fortune 500」に選出された企業がSEC(証券取引委員会)に提出した書類において、AIに最も言及しているのが「リスク要因」のセクションだという(注8)(注9)(注10)。

 2025年を迎え、CIO(最高情報責任者)はこれまで以上にAI施策でROIを達成しなければならないというプレッシャーを感じている(注11)。これを受け、ベンダーはAI導入を進展させるために新たなアップデートやイノベーションに関連する具体的なユースケースをマーケティングに取り入れている(注12)。

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