システム導入を成功させる提案依頼書の書き方とは? 受注管理システムを例に解説

受注管理システムの導入を成功させることは簡単ではないが、提案依頼書(RFP)を活用することで市場の動向や主要な選択肢について理解を深められる。RFPに記載すべき内容を学び、導入を成功させよう。

» 2025年04月16日 07時00分 公開
[Paul KirvanTechTarget]

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 受注管理システム(OMS:Order Management System)とは、顧客からの注文を受け、それを処理、管理する業務を自動化、効率化するためのシステムだ。

 OMSの選定の際は、提案依頼書(RFP)を活用することで市場の動向や主要な選択肢について理解を深められる。また、RFPの前段階として、情報提供依頼(RFI)や見積もり依頼(RFQ)をする場合もある。RFIは、各ベンダーに対して具体的な機能やサービス内容の情報提供を求めるものであり、RFQは価格情報の提示のみを求めるものだ。

 受注管理システムを選定する際にRFPに記載すべき内容を学び、導入を成功させよう。

漏れはない? 提案依頼書に記載すべき内容

 RFPは法的な文書だ。ソフトウェアを購入するチームがベンダーの候補にRFPを発行する前に、組織の法務部門はそれを注意深くレビューすべきだ。ベンダーの提案内容とその法的な文言は、顧客ではなくベンダーの利益を図るために設計されている。RFPには、運用要件や技術要件だけでなく、法的要件も明記しなければならない。以下はOMSのためのRFPに記載すべき内容だ。

組織に関する説明

 このセクションでは、ソフトウェアを購入するチームが所属する企業に関する説明がされ、提案を募集している理由も説明される。OMSを求める理由、組織が現在どのように注文を処理しているかの説明、ソフトウェアを購入するチームが新しいOMSが自社にどのような利益をもたらすことを期待しているかなどの内容が含まれる。

 購入組織が既にOMSを使用している場合、このセクションでは現在のシステムをアップグレードまたは交換する必要がある理由を説明すべきだ。現在のOMSがオンプレミスシステムである場合、このセクションには、そのパフォーマンスの簡単な説明も含める必要があり、該当する場合は組織がクラウドサービスを検討することに前向きであることにも言及する必要がある。

入札業者への指示

 このセクションでは、提案書の提出期限、提案書に記載すべき情報、不適切な提出がなされた、または提出が遅れた場合の罰則、入札者による現地プレゼンテーションの可能性や複数の入札者が参加する入札者会議の詳細、その他の重要な要件など、ベンダーにとっての重要情報が提供される。

提案書のフォーマット

 このセクションでは、入札者に提案書の構成方法を指示する。提案書には以下のセクションを含められる。

  • 表紙と目次
  • 回答の意図(別ページでも可)
  • 秘密保持への対応(別ページでも可)
  • 送付状(別ページでも可)
  • 入札企業の概要
  • 提案するソフトウェア
  • 標準的なベンダー契約書とサービス契約書のサンプル
  • 提案されたシステムおよびオプションの機能やサービスを含む財務提案
  • 年次報告書やSECのForm 10-Kまたは10-Qなどの監査済み財務諸表
  • 参考リスト(購入企業が連絡可能かどうかの明記を含む)

 提案書には、入札者の財務状況や市場での存在感、競争上の地位、その他の関連する判断基準など、ソフトウェアを購入するチームが評価プロセスで使用できる情報も含まれる場合がある。

システム要件の説明

 このセクションでは、ソフトウェアを購入するチームが新しいOMSに求めるシステム要素や機能について説明がされる。

 ここで詳細を記載することは非常に重要だ。特に他のシステムとの相互運用性やネットワーキングの要件、スケーラビリティに関する内容が該当する。組織が新しいOMSに求める機能には、注文処理やピッキング、梱包、出荷、注文処理のパフォーマンスに関するデータ提供などの要素が含まれる可能性がある。

機能と性能

 RFPのこの部分には、購入企業が新しいシステムに求めるOMSの機能とその詳細が記載される。それには、企業が絶対に必要とするものもあれば、あるとよいと考えられているものもある。OMSの基本的な機能は次の通りだ。

  • 営業チームやカスタマーサービスチームが、顧客とスムーズにやりとりできるインタフェースを備えている
  • 顧客からの特別な要望がない限り、オペレーターを介さずに全ての取引を自動で処理できる顧客対応機能がある
  • 複数の販売チャネルや通貨、地域に対応した注文管理機能を持つ
  • ワークフローを自動化し、発注書作成などの手作業を大幅に減らせる
  • 配送ラベルを作成し、トラックや航空便、船便など配送手段の選択が可能
  • 運送業者や郵便サービス、即日配送サービスなどとの連携に対応した配送管理機能がある
  • 返品用のラベル発行や、返金処理など、返品業務を一元管理できる機能がある
  • システムのパフォーマンスデータを参照し、最適な稼働状況や他システムとの連携状況を把握できる
  • 問題の兆候を事前に察知してユーザーに警告できる予測機能を備えている
  • 障害報告やアップグレード、パッチ適用、保証に関する管理機能が整っている
  • 利用規模やニーズの変化に応じて、柔軟に拡張可能な設計となっている

利用規約

 このセクションでは、各ベンダーが対応しなければならないさまざまな要件を規定している。ソフトウェア購入チームが含める可能性のある条件には、以下のようなものがある。

  • ベンダーが提案書を提出しても、それだけで契約の締結や継続が保証されるわけではない、という免責事項
  • 提案内容の有効期間
  • 入札者が提案書作成にかかる全費用を負担するという条件
  • 特定の期間内にベンダーが提案を変更または撤回できるかどうかのルール
  • 提案を承認または拒否する権利を持っていること

RFPのタイムライン

 このセクションでは、提案の作成および提出プロセス中にベンダーに関連する全ての日付を明示している。

 これらの日付には、提案書の提出期限、入札者からの質問とその回答、入札者のデモンストレーション、入札者会議、ソフトウェア購入チームによるベンダー選定と契約締結の予定日などが含まれる。

ベンダー企業の詳細

 このセクションでは、ベンダーが資格と経験を示し、ビジネス資格情報を提示する。会社名や住所、Webサイト、DUNS番号、納税者番号、会社の沿革と現状、従業員数、提案されたソフトウェアのユーザー数、下請業者の使用状況などが含まれる。

提案されたソフトウェア

 このセクションでは、入札者が自らの提案がRFPの要件を満たす理由を説明し、正式な提案を提示する。また、このセクションには、システムの各側面についてベンダーに詳細を求めるアンケートが含まれる場合もある。

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