国内IT市場は2029年に33兆円超え 第3のプラットフォームが成長をけん引

IDC Japanは国内第3のプラットフォーム市場が2025年に27兆円規模へ拡大すると予測し、産業別のIT投資動向を明らかにした。

» 2025年05月24日 07時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 IDC Japan(以下、IDC)は2025年5月21日、国内第3のプラットフォーム市場の支出額予測(2024〜2029年)を発表した。この市場は、2025年には27兆7040億円に達し、前年比成長率は9.0%と見込まれている。さらに、2029年には33兆1614億円に達し、2024〜2029年の複合年間成長率(CAGR)は5.5%になると予測している。

米国の貿易関税施策による影響は

 IDCが提唱する第3のプラットフォームとは、モバイルとソーシャル技術、ビッグデータ、そしてクラウドという4つの基盤技術が融合した、現代のIT市場を牽引する中核的な情報基盤を指す。

 IDCでは米国の貿易関税施策による影響は日本国内におけるIT/デジタル支出には比較的軽微と見ており、レジリエンス強化や脱炭素化を重視する企業による投資が、引き続き市場を支えると分析している。

 産業別に見ると2025年は「小売」「運輸」「個人向けサービス」分野における成長が顕著で、企業全体の平均を上回ると予測されている。インバウンドの急増を背景に消費活動が活発化し、各企業の業績も改善傾向にあることから、オムニチャネル戦略やパーソナライズ施策への投資が進むとみられる。

 「金融」分野では業務効率化やサービス高度化を目的としたIT/デジタル投資が進展している。特に生成AIやクラウド、デジタルチャネルの活用が加速しており、大手金融機関では営業とデジタルの融合、新サービス創出、異業種連携に向けた取り組みが広がっている。一方、地域金融機関では成長は限定的であるものの、クラウド基盤の整備を通じた地方創生支援が進んでいる。

 製造分野では組立製造業における人手不足や人件費上昇への対応として、製造プロセスの自動化やAI活用、サプライチェーン最適化などの取り組みが強まっている。プロセス製造業においても、設備保守や脱炭素対応への支出が継続し、消費財系では顧客データを活用した製品開発や顧客体験向上への関心が高まっている。

 「中央官庁」「地方自治体」では、デジタル庁の主導による情報基盤整備や業務システムの標準化が進められている。2026年3月までの標準化完了期限を控える中で、対応完了自治体では支出が落ち着く一方、政令市を中心に移行の遅れが見込まれる自治体もあることから、2026年以降も一定の成長が継続するとみられる。

 IDCのリサーチマネジャーである敷田 康氏は、米国の関税政策への企業の対応がITサプライヤーにとってはサプライチェーンレジリエンス強化の観点からビジネス拡大の機会となることを踏まえ、「ITサプライヤーは、それらのソリューションの『システム導入支援事業者』にとどまるのではなく、『業務変革の伴走者』として顧客企業の意思決定を支援する立場で提供することで、サプライチェーンマネジメントやリスク管理といった領域における提案の幅が広がり、IT/デジタル支出の重点領域として中長期的なビジネスの拡大を見込むことができる」と述べている。

 なお今回発表のデータは、IDCのレポート「国内第3のプラットフォーム市場 産業分野別/企業規模別予測、2025年〜2029年」に基づいており、国内の21分野(企業17業種、非企業4分野)における支出実績および予測が詳細に分析されている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

注目のテーマ

あなたにおすすめの記事PR