Amazonが巨額投資を“正当化” AIの「何」に投資しているのか?CIO Dive

Amazonのアンディ・ジャシーCEOがAIに投資し続ける方針を“正当化”する文書を公開した。同社は一体何に1000億ドルもの巨額を投資しているのか。具体的に見てみよう。

» 2025年05月31日 08時00分 公開
[Roberto TorresCIO Dive]

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 2025年4月10日(現地時間、以下同)に公開された株主宛ての文書で(注1)、Amazonのアンディ・ジャシーCEOは「今後のビジネスチャンスをつかむために、AIの計算能力と資本に対する尽きることのない欲求を満たし続ける計画だ」と述べた。

Amazonの具体的な投資内容とは

 ジャシー氏は「AIは世の中の全てを作り直すような、一生に一度の大きな変革だとわれわれは信じている。これまでに見たことのないような需要があり、今積極的に投資することで、顧客や株主、当社のビジネス全てにとって大きな利益になると確信している」と力説する。

 同社が積極的に投資している対象は何か。具体的に見てみよう。

 まず同氏は、Amazon Web Service(AWS)が提供するサービスに対する需要が急増していることや、AIの導入によって得られる顧客体験の向上を挙げて、「AIの基盤を市場に提供するために当社は投資してきた」と述べた。この取り組みには、2024年12月に発表された「Amazon Nova」や、計算コストの削減に貢献する独自開発のAIチップ「Trainium2」などが含まれている。

 主要なハイパースケーラーであるAWSやMicrosoft(注2)、GoogleはAIの需要に対応するために数十億ドル規模を設備に投資すると表明しており(注3)、その支出の多くをインフラ整備が占めると説明している。

 Amazonのブライアン・オルサフスキー氏(CFO《最高財務責任者》)によると、同社は2025年だけで1000億ドルの設備投資を予定している(注4)。

 2025年2月に開催された2024年第4四半期の決算説明会で、オルサフスキー氏は次のように述べた。「(今回の設備投資は)2024年と同様に、支出の大半はテクノロジーインフラに対するニーズの高まりをサポートするためのものだ。主にAWSに関連しており、AIサービスへの需要対応や、北米および海外部門を支える技術インフラの整備もここに含まれている」

 Amazonは計算能力の増強に加えて、基盤モデルの展開や専門的なトレーニングへのアクセスの拡大(注5、注6)、AIに最適化された独自チップの開発にも取り組んできた。最新のAIチップ「Trainium3」は2025年後半に発表される予定だ(注7)。

 ジャシー氏によると、AIサービスにおける最大のコスト要因はAIチップだという。「これまで大半のAIはある1社のチッププロバイダーに依存してきており、莫大(ばくだい)なコストが発生していた。Trainiumはこうした状況を変えるだろう。新しいAIチップであるTrainium2は、現在主流のGPUコンピューティングインスタンスと比べて、価格性能比が30〜40%優れている」(ジャシー氏)

 プロバイダー各社が計算能力の強化を目的とした設備投資を拡大する中で、各国政府もAIに対応したインフラに対する国内からのアクセスを拡充する計画を打ち出している。

 2025年1月、米国のトランプ政権は、民間企業の支援を受けて国内データセンター設備を拡大する、5000億ドルの投資計画を発表した(注8)。さらに2025年4月9日には、欧州連合(EU)がEU圏のコンピューティング能力と専門スキルを向上させるための独自の行動計画を発表した(注9)。

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