NVIDIAが米国工場建設に5000億ドル投入 トランプ関税が半導体市場に与える影響は?CIO Dive

Nvidiaの創業者兼CEOであるジェンセン・フアン氏は2025年4月14日に「世界のAIインフラを動かす原動力が米国内に初めて構築されつつある」と述べた。需要が高まるばかりの半導体は、いわゆるトランプ関税によってどのような影響を受けるのか。米国に製造工場を建設すると発表したNVIDIAの例を紹介する。

» 2025年05月22日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 半導体メーカーであるNVIDIAは、米国に半導体製造工場を建設する計画を2025年4月14日(現地時間、以下同)に発表した(注1)。同社は製造の国内回帰の一環としてTSMCやFoxconnやWistron、Amkor、Siliconware Precision Industriesと協力し、米国のAIインフラ構築に最大5000億ドルを投じるとしている。

ついに首位に躍り出たNVIDIA トランプ関税の影響は?

 発表によると、NVIDIAはアリゾナ州に100万平方フィートを超える工業用地を確保し、GPUチップ「Blackwell」の製造および試験をここで実施する。テキサス州ではAIプロセッサの製造を進めるとしている。NVIDIAは今後12〜15カ月かけて製造を開始する予定だ。

 NVIDIAのジェンセン・フアン氏(CEO)は今回の発表で「世界のAIインフラを支える原動力が米国に初めて構築されつつある。米国での製造能力を増強することで、AIチップやスーパーコンピュータの需要急増に対応しやすくなる。サプライチェーンの強化とレジリエンスの向上にもつながる」と述べた。

 NVIDIAが米国での製造を開始した背景に何があるのか。また、いわゆるトランプ関税は半導体にどのような影響を与えるのか。

 2025年4月2日にドナルド・トランプ米大統領が発表した広範な関税措置は、経済の先行きに対する懸念や不透明感をもたらした(注2)。ただし、関税措置は発表から1週間後にトランプ大統領によって一時的に停止されている。

 米国外で製造された製品にかかる関税は、ハードウェア部品の価格上昇を招く恐れがある(注3)。企業のIT投資計画を圧迫し、テック企業の幹部を窮地に追い込んでいる。

 コンサルティングファームのWest Monroeでシニアパートナー兼オペレーションエクセレンスの責任者を務めるゴードン・ウォン氏は次のように述べた。「将来、企業にどのような関税が課されるのかは分からない。確実なのはあらゆるもののコストが上昇し、その影響を抑えるためにコスト削減を迫られることだ」

 2022年にジョー・バイデン大統領(当時)の下、米商務省が先端コンピューティング製品や半導体製造装置に関して中国向けの輸出規制を導入して以降(注4)、AIチップメーカー大手のNVIDIAは貿易制限の対象になっている。

 米商務省が通商拡大法232条に基づく調査を開始したことで(注5)、米国外で製造された半導体やその部品に関税が課される可能性が出てきた。半導体の輸入規制が本格的に検討され始めている。

 調査企業であるGartnerが2025年4月7日の週に発表した分析によると、AIコンピューティングの需要の高まりがデータセンターへの投資ラッシュを引き起こし(注6)、NVIDIAの収益を大幅に押し上げた。これにより、同社は2024年に世界の半導体市場でトップの座に躍り出た。2025年4月7日の週に公表されたGartnerのレポートによると(注7)、NVIDIAはSamsungを抜いて世界の半導体市場の約12%を占めた。半導体市場の規模は前年比21%増の6559億ドルに達したという。

 Gartnerのガウラヴ・グプタ氏(バイスプレジデント兼アナリスト)は、レポートで次のように述べた。「NVIDIAが首位に躍り出たのは、データセンターにおけるAI処理に主力として選ばれている同社のGPUに対する需要が大幅に増加したためだ」

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