電通総研は、企業グループの資金を集約、可視化し、効率的な運用と迅速な経営判断を支援する新システム「Ci*X Treasury」を発表した。資金管理、財務業務の標準化とガバナンス強化に対応している。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
企業経営を取り巻く環境は年々複雑化している。グローバル展開の拡大、M&Aによる事業の多様化、地政学的なリスクの顕在化は、資金繰りや為替の安定性に直結する課題を生み出してきた。近年は為替相場の急激な変動やサプライチェーンの混乱が、企業の財務戦略に深刻な影響を及ぼしている。特に企業グループ全体における資金管理や財務業務の透明性と可視性が、持続可能な経営の鍵となっている。
このような経営課題に対応するため、電通総研は2025年6月17日、新たな資金管理システム「Ci*X Treasury」(サイクロス トレジャリー)の提供を開始した。同社が展開してきたエンタープライズ向けソリューション「Ci*X」シリーズの第5弾であり、企業グループ全体の資金をリアルタイムで可視化することで、資金の効率的な運用と迅速な意思決定を支援する。本システムは企業の資金管理および財務業務の標準化を目指して開発された。
Ci*X Treasuryは、資金管理、財務業務に必要な機能を網羅し、資金の運用や調達、有価証券の管理を含む領域を一体的にサポートする構成となっている。資金繰りや日次の出納、金融機関との取引履歴まであらゆる資金データを集約、管理できる。会計処理の自動化機能により、株式の売買や評価の作業負担を軽減し、人的ミスのリスクも抑制される。これらの機能は、従来の表計算ソフトに近い操作感で利用でき、現場への導入ハードルを下げることにつながる。
資金の集中管理を通じたガバナンスの強化も本システムの重要な要素とされている。マルチバンクへの対応により、複数の金融機関に対しログイン操作を一本化し、業務の煩雑さを排除する。また、権限管理の仕組みにより、支払い業務の内部統制が強化される他、シェアードサービスの導入企業においても、承認フローの集約を図れる。こうした機能は全社的なガバナンスの高度化に貢献する。
意思決定の迅速化も企業経営において重要な観点となっている。Ci*X Treasuryは、グループ全体の資金口座情報を一元管理し、それに基づく資金配置の最適化を実現する。為替および金利の変動に対しポジション管理やシミュレーション機能も備え、将来のリスク予測と対策の立案を支援する構成となっている。こうした可視化機能により、経営判断のスピードと精度を格段に向上させる。
本システムはスモールスタートを可能とする柔軟な設計がされており、企業の個別要件に応じた機能選択もできる。資金管理機能だけの導入や、有価証券管理のみの活用など、用途に応じた段階的な導入が可能だ。環境構築や運用を一体型で提供するサービスも用意されており、社内リソースに制限のある企業にも対応できる。
電通総研は、これまでに経費精算や会計処理、ワークフロー統合など、さまざまな業務分野においてCi*Xシリーズを展開してきた。今回のCi*X Treasuryの提供により、企業グループの財務、資金領域における高度な管理体制の構築を後押しする。同社は今後も引き続きCi*Xシリーズの開発を進め、企業の経営革新とデジタル化への移行を支援する姿勢を示している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.