ソフトウェアのライセンスを購入しないで社内で利用しているケースが数千件に上ることが発覚したシーメンス。VMwareがシーメンスを訴えた裁判が泥沼化している理由とは。
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企業に潜むリスクにはいろいろあるが、ライセンス利用料の一部を支払わずに利用しているソフトウェア製品もそのうちの一つだ。IT資産管理サービスを提供するFlexeraの調査によると、ベンダー監査の結果、1000万ドル以上の支払い義務が発生した企業の数は、2024年には前年比で倍増している(注7)。
仮想環境を提供するVMwareは、顧客企業であるSiemensを相手取り2025年3月21日(現地時間、以下同)に米国デラウェア州連邦地方裁判所に著作権侵害の訴状を提出した。
VMwareは、「Siemensが利用しているとして申請した中には、同社がライセンスを一度も購入していないVMware製品のコピーが数千件含まれていた」「Siemensが購入していないVMwareのソフトウェアに対してサポートサービスを要求してきた」と主張している。
同訴訟は泥沼化の一途をたどっている。
VMwareは「Siemensが訴訟の進行を妨げている」と非難し、2025年6月6日に米国デラウェア州の地方裁判所に書簡を提出した(注1)。
この書簡で、VMwareは次のように述べた。「Siemensによる証拠開示および訴訟進行の遅延を図る行為は、本訴訟に至った経緯と一致している。VMwareはライセンスに定められた範囲を超えて自社製品が使用されたことを示す情報を提供した。それにもかかわらず、Siemensは『範囲を逸脱していない』という主張を裏付ける情報の提供を拒否したのだ」
これに対し、Siemensは2025年6月9日、裁判所に書簡を提出し(注3)、訴訟棄却を求める意向を示して反論した。「当社は本訴訟をいかなる形でも遅延させていない。裁判所および当事者双方の資源を最も有効に活用するためには、これらの動議が解決されるまで証拠開示に関する議論を先送りにするのが最善だ」
VMwareとSiemensとの今回の訴訟は、BroadcomがVMwareを610億ドルで買収してから起きた大手顧客との訴訟としては2件目になる(注4)。
2024年11月、大手通信企業のAT&TはBroadcomとの訴訟で和解し、VMwareのライセンスおよびサポートサービスをめぐる契約違反の紛争におけるさらなる法的措置を回避した(注5)。AT&Tは同年8月にニューヨーク州の最高裁判所に訴えを起こし、VMwareの利用料金が10倍以上に引き上げられたことに対する差し止め措置を求めていた。
SiemensとVMwareとの今回の騒動は、同社が過去に購入したVMware製品に対して1年間のサポート延長を求めたことに端を発している。VMwareが提出した最初の訴状では、2024年9月の要請に含まれていたリストで「Siemensがライセンスを一切購入していないVMware製品を数千件にわたりダウンロードや複製、配布、導入していたことが明らかになった」と主張している。
提出書類によると、Siemensは2024年10月に修正後のリストを提出した。この時に提出されたリストはVMwareが保有しているSiemensのライセンス記録により近い内容だったが、その変更点や不一致の理由について一切説明されていなかった。VMwareは「Siemensは独立監査の実施を拒否した」と述べる。
その後、Siemensの回答期限を60日間延長して2025年6月10日までとすることで両者は合意した(注6)。VMwareは「本件の特異な事情に鑑みて、暫定的に保守およびサポートサービスを提供する」と述べたが、将来的な補償を求める権利は「留保する」とした。
2025年6月9日の時点で、両者はコメントの要請に応じなかった。Siemensは裁判所に提出した書簡で、VMwareが求める証拠開示会議への参加を含め、あらゆる正式な裁定に従う意向であることを示した。
(注1)VMware LLC v. Siemens AG Letter ― Document #15(COURT LISTENER)
(注2)VMware feuds with Siemens in legal battle over software licensing(CIO Dive)
(注3)VMware LLC v. Siemens AG Letter ― Document #16(COURT LISTENER)
(注4)VMware’s first contentious year under Broadcom drives customers to weigh other options(CIO Dive)
(注5)Broadcom, AT&T reach settlement in VMware legal dispute(CIO Dive)
(注6)VMware LLC v. Siemens AG Stipulation to EXTEND Time ― Document #14(COURT LISTENER)
(注7)FinOps targets SaaS as software audit costs spike(CIO Dive)
(初出)VMware accuses Siemens of stalling in software licensing dispute
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