NEDOは「GENIAC」事業の一環として、生成AI基盤モデルの国産化を目指す研究開発実施先を選定した。楽天やリコーが採択され、日本語に特化したLLMやマルチモーダルAIの開発に取り組む。
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新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2025年7月15日、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/競争力ある生成AI基盤モデルの開発(GENIAC)」に係る実施予定先を決定したと発表した。GENIACは、生成AI基盤モデルの国産化と国内技術力の強化を目的とし、計算基盤の整備や実証支援、企業間連携の促進などを進めている。本プロジェクトは経済産業省が推進しており、今回が3期目の募集だ。
NEDOは公募に寄せられた43件の申請に対し審査し、複数の企業・機関を実施予定先として選定した。対象となる研究開発項目は、「計算可能領域拡大のための計算基盤技術開発」のうち、「競争力ある生成AI基盤モデルの開発」に関するもの。本事業の実施期間は交付決定日から2026年2月28日までとされている。
この一環として、楽天グループやリコーなどが採択され、それぞれが異なるアプローチで生成AIの国産モデル開発に取り組むことが明らかとなった。楽天は「長期記憶メカニズムと対話型学習を融合した最先端の生成AI基盤モデルの研究開発」、リコーは「企業ドキュメント群の高度な解析を通じて知の活用を支援するマルチモーダルLLM」の開発をそれぞれテーマに掲げている。
楽天グループは2025年8月から、日本語に最適化され、より長く複雑な日本語の文脈処理に優れた大規模言語モデル(LLM)の研究開発を開始する。応答時にアクセス可能な情報量を拡張する技術を導入し、記憶能力の向上と応答性能の改善を図る。これにより、ユーザーとの対話履歴を利用したパーソナライズが可能なAIエージェントの実現を目指す。
リコーは、高度な推論能力を持つマルチモーダルLLMの開発に着手する。文書画像の多段推論による理解力向上を軸とし、画像トークンの圧縮技術やモデルマージ技術などにより、運用および開発コストの削減も並行して進める。GENIAC第2期で開発した基本モデルを踏まえ、商用オープンソースモデルを上回る性能の実現を目指す。
NEDOは、今後もGENIACを通じて、国内の生成AI技術基盤の確立と持続的な成長に資する開発体制の構築を推進する方針を示している。生成AIの国際競争が加速する中、日本国内における基盤モデル開発力の底上げは喫緊の課題とされており、今回の取り組みはその一環として位置付けられる。
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