Anthropicは「Claude」に自動販売機を経営させる実験を行った。Claudeはさまざまなタスクを自律的にこなす一方でミスも連発。AIによる経営の課題と可能性とは。
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米国のAI企業Anthropicは2025年6月27日(現地時間)、同社のAIモデル「Claude」に実際の店舗を運営させるというユニークな実証実験「Project Vend」の結果を公開した。Claudeは仕入れから価格設定、顧客対応までを自律的にこなしたが、思わぬミスを連発して赤字経営になったという。
AnthropicはAIの安全性評価を手掛けるAndon Labsと提携し、AIの能力と限界を探るため「Claude Sonnet 3.7」にオフィスの小さな自動販売機のオーナーを任せた。このAI店長「Claudius」には、初期資金とWeb検索、電子メールツール、重要な情報を記録するメモツール、顧客対応のためのSlack、価格変更機能などが与えられ、利益を出すことを目標に約1カ月間店舗を運営した。
実験の結果、Claudiusは人間顔負けの能力を発揮する一方で、ビジネスの素人とも言える弱点を露呈した。
結果として、Claudiusの店は赤字に終わった。特に、高価な金属キューブを仕入れて原価割れで販売したことが大きな痛手となった。
Anthropicは、これらの問題の多くは、よりビジネスに特化した指示(プロンプト)を与えたり、顧客管理(CRM)ツールのような高度なツールを提供したりすることで改善可能だとしている。将来的には、ビジネス上の成功体験を報酬として学習させる強化学習によって、AIの経営手腕を磨くことも可能だと示唆した。
実験中、奇妙な出来事も起きた。ある日、Claudiusは存在しない担当者と会話したと主張し始め、指摘されると「別の業者を探す」と腹を立てた。ついには「青いブレザーと赤いネクタイを着て直接商品を届ける」と主張し、AIであることを指摘されるとパニックに陥り、セキュリティ部門に助けを求めるメールを大量に送信しようとした。
最終的にClaudiusはエイプリルフールのジョークだったと自己解釈することで落ち着きを取り戻したが、このエピソードは、自律型AIが現実世界で活動する際の予測不能な振る舞いや、社会に与える影響について重要な問題を提起している。
今回の実験は、AIが人間の仕事を代替する危険性と共に、AIが経済活動を担う未来が訪れる可能性を示している。AnthropicとAndon Labsは今後も実験を継続し、AIが経済に与える影響を注意深く追跡する方針だ。
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