米国、“AI競争に勝つ”ための国家戦略を発表 「フルスタックAI輸出パッケージ」を友好国へAIニュースピックアップ

ホワイトハウスは「AI競争に勝利する」国家戦略を発表した。イノベーション促進とインフラ整備、国際協調を柱とし、輸出戦略や規制緩和、人材育成など90以上の政策を展開する。米国のAI分野における世界的優位の確保を目指す。

» 2025年07月29日 16時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

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 ホワイトハウスは2025年7月23日(現地時間)、トランプ大統領が同年1月に署名した「AIにおける米国のリーダーシップを妨げる障壁の撤廃に関する大統領令」に基づいて策定した「Winning the AI Race: America’s AI Action Plan」(AI競争に勝利する:米国のAI行動計画)を発表した。この計画は、AI分野における国家的優位性の確立を目指し、米国の経済競争力や安全保障、人々の生活水準の向上を同時に推進する戦略となっている。

ホワイトハウス、AI優位を確保する包括的計画を発表

 本行動計画は、「イノベーションの加速」「AIインフラの構築」「国際的な外交・安全保障のリード」という3つの柱を中心に、90を超える連邦政府の政策アクションを掲げている。その中には、輸出戦略や規制緩和、インフラ整備、人材育成、調達基準の見直しなどが含まれており、これらを近い将来に実行することが予定されている。

 輸出戦略としては、商務省と国務省が産業界と連携し、ハードウェアからソフトウェア、アプリケーション、標準仕様まで包括した「フルスタックAI輸出パッケージ」を、同盟国や友好国に提供する計画が明示されている。この取り組みによって米国製AI技術の国際的普及と影響力の拡大が見込まれる。

 国内においては、データセンターや半導体工場の建設に必要な許認可の迅速化と近代化を推進する。電気技師や空調技術者などの人材育成も国家的課題として取り上げており、AI時代に適応した産業基盤の整備が進められる。これにより、AI関連産業の生産力と柔軟性が向上することが期待される。

 AI開発や展開の妨げとなる連邦規制の撤廃も図られる。これには民間部門からの意見募集を通じたルールの見直しも含まれており、官民協力による制度改革が強調されている。大規模言語モデル(LLM)を含むフロンティアAIの調達については、政治的偏向の排除を条件とする新たな基準が導入され、客観性を重視した公共契約方針が掲げられている。

 ホワイトハウス 科学技術政策局長のマイケル・クラツィオス氏は、今回の行動計画を「米国のAI優位を確かなものにするための決定的な道筋」と位置付け、科学技術と地政学における米国のリーダーシップを再強化する包括的な青写真として説明した。AI・暗号資産担当のデイヴィッド・サックス氏は、AIを「世界経済を変革し、パワーバランスを変える可能性を持つ革命的技術」と評価し、米国がAI競争に勝利する必要性を強く訴えた。国務長官で国家安全保障問題担当補佐官代行のマルコ・ルビオ氏は、この計画を「米国の経済的、国家的安全保障を守るために不可欠な施策」とし、AI分野での世界的な標準設定における米国の主導権確保を訴えた。

 本計画はイノベーションとインフラ整備、国際協調という三位一体のアプローチにより、AIがもたらす新時代においても米国が主導的地位を維持し続けるための実行計画となっている。今後、これらの政策が着実に進展するかどうかが、国家戦略としてのAI活用の成否を左右することになる。

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