NTTデータとMistral AIは、安全かつ持続可能なエンタープライズプライベートAIの共同展開を発表した。規制の厳しい業界に対応したAI導入支援や、地域特化型のコールセンターソリューション開発が進められ、教育・運用体制も強化される。
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NTTデータとMistral AIは2025年7月29日(現地時間)、安全かつ持続可能なエンタープライズプライベートAIソリューションの共同展開に関する包括的な提携を発表した。NTTデータのAIを含むITサービスの実績と、Mistral AIの高性能な生成AIモデルが統合され、規制の厳しい業界においても信頼性の高いAI活用が可能となる道筋が示されている。
今回の提携における初期の重点領域として、持続可能性と高度なセキュリティを両立させたプライベートAIの共同開発が掲げられている。金融や保険、防衛、公共といった分野における顧客に、インフラからビジネスプロセスまで一貫したAI導入支援を提供する予定だ。プライベートクラウド環境での安全な運用を前提とし、個別の業務に適応したAIアプリケーションの実装が進められる。
IT基盤と顧客体験の分野でも、NTTデータの顧客対応プラットフォームにMistral AIの技術が統合され、欧州およびアジア太平洋地域でエージェント型のAIコールセンターソリューションの展開を開始する予定だ。地域ごとの言語や市場特性に合わせた大規模言語モデル(LLM)の共同開発も検討されており、各地域の特化ニーズに即したAI活用が推進されると見込まれる。
市場展開に関しては、フランスやルクセンブルク、スペイン、シンガポール、オーストラリアといった国々を対象に、地域ごとの特性を踏まえた販売戦略が設計される。AI導入のユースケース設計からカスタマイズ、導入、サポート、運用サービスまで、包括的な支援体制が整備される。各地域に専任の営業体制が設けられ、顧客の課題や期待に迅速に対応する仕組みも構築される見通しだ。
NTTデータは、技術力と知見を結集するためにMistral AIの技術拠点「センター・オブ・エクセレンス」を新設し、専門家チームを配置する。Mistral AIもNTTデータの従業員用に技術認定・教育プログラムを実施し、双方の連携基盤を強化する。こうした取り組みは、現場レベルでの導入・運用能力向上に資するものであり、技術移転の効率化にもつながると考えられる。
初期の共同プロジェクトの一例として、知的財産管理を専門とするグローバル企業Dennemeyerが、特許検索および分析の高度化を目的に、両社のAIソリューションの導入を決定した。この取り組みにより、安全なAIワークロードの実行基盤が構築され、知的財産分野における業務効率化が図られる。DennemeyerのグローバルCDOは「AIの業務統合において両社の技術的理解が鍵となる」と述べている。
NTTデータ・ルクセンブルクとMistral AIは、同国の金融・保険業界の主権型プラットフォームを共同開発する予定だ。この基盤は、規制環境に対応した形でのAI活用を想定しており、クリティカルなアプリケーションのホスティングが可能となる仕様を目指す。ルクセンブルクおよび周辺地域におけるAI導入の加速に貢献するものと評価されている。
今回の提携は、グローバルでAIの活用がさらに広まるかどうかの試金石になると言える。企業がAIを活用する基盤を整える上で、「プライバシーの保護」「事業規模の変化への対応力」「長期的な安定性」の3つをどう実現するかが、今後の鍵となるだろう。
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