Philipsが公開した「Future Health Index 2025」ではAI技術が医療に与える影響を、医療従事者と患者の視点から分析している。調査ではAIによる早期介入の可能性や転帰改善への期待が示されている。
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フィリップス・ジャパン(以下、Philips)は2025年7月28日、ヘルスケア分野における意識調査レポート「Future Health Index 2025 - Building trust in healthcare AI - Perspectives from patients and professionals」(以下、FHI 2025)の日本版を公開した。第10回目となる本調査では、AIを含む先端技術が医療に与える影響とその可能性を、医療従事者および患者の双方の視点から分析している。
FHI 2025は、2024年12月から2025年4月にかけて、世界16カ国で医療従事者1900人以上、患者1万6000人以上を対象に実施された国際的な意識調査だ。日本版においては、高齢化の進行や医療人材の不足、コスト増といった国内の医療制度が直面する課題に対し、AIがどのような支援を提供できるかに焦点が置かれている。
調査結果によれば、日本の医療従事者の約75%が「AIと予測分析により早期介入が可能になり、命を救える」と回答している。また60%がAIの活用によって患者の転帰が改善されると考えている。その半面、患者側ではAIを信頼しているとする回答は33%にとどまり、世界平均の59%を大きく下回っている。
医療現場の業務負荷に関するデータも明らかにされている。日本の医療従事者の約22%が、5年前と比較して患者との接触時間が減少し、その一方で「事務作業に多くの時間を割いている」と回答している。約65%が「データアクセスの問題により診療時間を損失している」としており、その内の20%以上が「1シフトあたり45分以上の診療時間を失っている」と述べている。
日本は自然災害の発生頻度が高いため、災害時におけるAIの有効活用にも注目が集まっている。AIを用いたトリアージや医療資源の配分最適化が期待されているが、導入の遅れによって診療の遅延やケアの品質低下といったリスクも指摘されている。
FHI 2025では医療従事者と患者の間に存在する「信頼のギャップ」も浮き彫りとなった。「AIを活用した医療記録の作成に自信がある」と回答した医療従事者は84%に上ったのに対し、患者側で同様の回答をしたのは30%にとどまった。この差異を縮小するためには、AIの利用目的や安全性に関する説明、データの扱いに関する透明性、法的な責任範囲の明確化が求められている。特にAI技術に理解のある患者ほど、より詳細かつ明確な説明を求める傾向が確認されている。
Philipsは本調査を踏まえ、今後の医療において「人間中心の設計」「人とAIの連携強化」「有効性と公平性の実証」「明確な運用指針の整備」「分野横断的な連携の推進」の5点が重要と提言している。これらを基盤とし、技術と信頼を両立させることで、より質の高い医療の提供が可能になるとしている。
同社代表取締役のジャスパー・アスエラス・ウェステリンク氏は「日本の医療制度は複雑な課題を抱えているが、AIはその解決に資する手段となり得る。今後も、テクノロジーと人の力を融合させ、誰もが安心して医療を受けられる社会の実現を目指す」と述べている。
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