「それでもオンプレ回帰は起きない」 データセンター調査から浮かび上がる“その理由”CIO Dive

ある調査によると、オンプレミスのコンピューティング能力は全体の3分の1強にすぎない。AIの活用に伴い、多くの企業がクラウド料金の急増に悩む中、なぜクラウド利用量は増加し続けるのか。また、ハイパースケーラーの「支配力」強化をどう見るべきか。

» 2025年08月13日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 市場調査会社Synergy Research Groupが2025年6月24日(現地時間、以下同)に発表したレポートによると(注1)、Amazon Web Service(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloudといったハイパースケーラーは過去1年間でコンピューティング分野における「支配力」をさらに高めている。

 同レポートによると、世界におけるデータセンターの容量の44%がハイパースケーラーのクラウドが占めている。同社によれば、その容量の半数以上はハイパースケーラー自身が所有するデータセンターに収められている。

なぜ「オンプレ回帰」は起きないのか?

 また、最近のGPU導入によって多少増えたものの、オンプレミス環境に残っているコンピューティング能力は全体の3分の1強にすぎないという。

 企業のAI活用が進む中、クラウドにおけるデータの転送量や利用量が当初の想定よりも大幅に増加しているケースは多い。多くの企業にとってクラウド費用の急騰は頭の痛い問題であるにもかかわらず、なぜクラウド利用量は今後も増え続ける見込みなのか。

 Synergy Research Groupは、2030年までにハイパースケーラーが世界のデータセンターの容量の60%以上を占めるようになると予測。オンプレミスのデータセンターの容量はわずか22%になる見込みだ。ただし、2024年時点ではオンプレミスのデータセンターの容量は20%になる見込みだったため、今回の予測では2ポイント上方したことになる(注2)。

 なお、2025年第1四半期には、オンプレミスのデータセンターが全体の34%を占めており、ハイパースケーラー以外の企業が運営するデータセンターが22%の容量を提供している。

 Synergy Research Groupのジョン・ディンスデール氏(チーフアナリスト)は「企業はAIワークロードを支えるためにITインフラを拡大している」と述べた。同社によると、オンプレミスのデータセンターの容量は減少していないようだ。同氏は電子メールで「オンプレミスのデータセンターの容量はこれまで横ばいで推移していたが、現在はAIやGPUのためのサーバがオンプレミスで展開されており、多少の増加傾向にある」と説明した。

 膨大な計算能力を必要とするLLM(大規模言語モデル)は、ITインフラの根本からの再構築を促し、生成AIの導入を支えるための施設やハードウェアへの巨額投資を促している。

 Synergy Research Groupによると、ハイパースケーラーが運営するデータセンターの規模は拡大し、数も増加している(注3)。クラウドプロバイダーは2025年第1四半期末時点で1189の施設を運営しており、前年の1136から増加している。同社は2025年3月、AWSおよびMicrosoft、Google Cloudの3大テクノロジー企業がハイパースケーラー全体の容量の約60%を占めていると報告した。

 ディンスデール氏はレポートで「ハイパースケーラーは、大半の企業よりもAIの運用に適した立場にある」と述べた。

強まるハイパースケーラーの「支配力」

 企業がITインフラおよびプラットフォームサービスへの依存を強めていることは、クラウドデータセンターへの投資規模の大きさに表れている。調査企業Dell’Oro Groupによると、2025年第1四半期のデータセンターへの投資額は前年比で53%増加した(注4)。この急増をけん引したのは主にAWSおよびMicrosoft、Google Cloudの3社で、3社は2025年中に合計で2500億ドルを超える設備投資を計画している。

 コストの高騰やAIに関連するデータプライバシーへの懸念が企業のクラウド志向をやや抑制し、一部の組織はハイブリッド戦略へ再注力している(注5)。しかし、クラウド移行の傾向が鈍化しているわけではない。

 2025年6月24日に発表されたCBREの調査によると(注6)、データセンターのハードウェアをユーザー企業への貸し出し用に設置しようとするハイパースケーラー以外のデータセンター運営事業者は、逼迫(ひっぱく)した市場と高騰する賃料の問題に直面している。同社によると、2025年第1四半期には、米国の主要地域の大半でデータセンターの「空室率」が過去最低を記録。それに伴って賃料は前年比で最大15%上昇した。

 AIワークロードや、AIが必要とする大規模なデータパイプラインに対応するためには、ハイパースケーラーが企業にとって最も現実的な選択肢となる可能性が高い。

 「全体としてトレンドは同じ方向に進んでおり、その背景が何かは一目瞭然だ。2012年当時、企業は自社のデータセンター向けハードウェアとソフトウェアに対して、クラウドインフラサービスの12倍もの費用を支出をしていた。しかし現在では、企業は自社のデータセンター設備よりも、クラウドサービスに3倍の費用を支出している」(ディンスデール氏)

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