Okta Japanは年次調査「AI at Work 2025」を発表した。世界の経営幹部の66%がAIを戦略上不可欠と認識し、特に業務効率化とセキュリティ強化に重点を置いている。日本の経営層は期待と慎重姿勢が共存しているようだ。
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Okta Japanは2025年8月13日、世界の経営幹部を対象に実施した職場でのAI利用に関する年次調査「AI at Work 2025」の結果を発表した。同調査は、AIが職場にもたらす影響や戦略的優先事項、AIエージェントおよび非人間アイデンティティー(NHI)の利用状況と課題について、多角的に分析している。
同調査はオーストラリアやカナダ、フランス、ドイツ、インド、日本、オランダ、英国、米国の9カ国において、企業経営幹部260人を対象に2025年5月に実施した。対象企業の規模は、従業員数500人未満が26%、500〜999人が10%、1000〜4999人が22%、5000〜9999人が13%、1万人以上が29%と幅広く分布している。
同調査結果によると、2025年時点で経営幹部の66%がAIをビジネス戦略において重要または不可欠と評価している。優先事項としては「組織効率の最適化」(70%)、「タスク自動化による精度向上」(62%)、「セキュリティ・脅威検出の改善」(62%)が上位を占めた。AIの広範な導入割合は2024年の17%から2025年には28%に増加したが、多くの企業は依然として導入を中程度と位置付けている。
成功の要因としては、高品質なデータ確保のためのプロセスとガードレール(35%)、明確なユースケース定義(30%)、ガバナンスとセキュリティ(26%)が挙げられた。
AIに関する最大の懸念はデータプライバシーであり、次いでセキュリティリスクが挙げられた。Oktaが実施した別調査「Customer Identity Trends Report 2025」でも、消費者の60%がAIによるデジタルアイデンティティーへの影響を懸念していると回答している。
セキュリティ目的でAIを活用している企業は前年の71%から65%に減少したが、「AIはAIに対する最善の防御策」という見方への賛同は18%から41%へと増加した。IDおよびアクセス管理(IAM)を重要とする割合も46%から52%に上昇している。
AIエージェント利用は中程度と限定的がいずれも41%で、主な用途は反復作業の自動化(81%)やカスタマーサービス強化(65%)だった。今後3年間のセキュリティ懸念はAIガバナンスと監視(58%)、コンプライアンスと規制要件(50%)が上位を占めた。NHIの利用は広範囲が42%、中程度が55%で、重要なタイプはAPIとトークン(33%)、サービスアカウント(31%)、マシン間アイデンティティー(29%)となった。NHIのセキュリティ懸念はアクセスと権限の制御(78%)、ライフサイクルのガバナンス(69%)、スプロールの可視化(57%)で、十分な戦略やロードマップを持つ企業は10%にとどまっている。
日本においては、セキュリティをビジネス戦略上の最上位に置く経営幹部が他の国より高い割合を占め、AIを不可欠と捉える割合は30%と、インドに次いで高い水準だった。AIへの日常的感情は懸念より期待を持つ割合が70%と、調査対象国で一番高い。
その一方で、消費者はAIエージェントや個人データ管理に慎重な姿勢を示している。顧客用AI導入は全体として慎重だが、一度導入すると深く統合する傾向が見られる(広範囲統合33%)。日本の経営幹部の70%がNHIを広範囲に利用していると回答したが管理体制は未整備であり、明確な戦略を有する企業は9%にとどまった。
Okta Japanは、AI導入の基盤整備と堅牢(けんろう)なガバナンス構築、NHIのセキュリティ管理体制の早急な確立が今後の企業競争力維持に不可欠と指摘している。
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