AIスキルの不足は2023年から大きく増加し、ITベンダーのNash Squaredがこれまで記録した中で最も急激な増加となった。
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ITベンダーのNash SquaredとHarvey Nashが2025年5月(現地時間、以下同)に発表した「Digital Leadership report」によると(注1)、企業がAIの導入を急ぐ中で、AIに関連するスキルを備えた人材の不足が急速に拡大しているという。レポートを作成するために両社は2000人以上のテクノロジーリーダーを調査した。
ITリーダーの半数以上は「AIスキルを備えた人材の不足に悩まされている」と答えており、この割合は2023年の28%から大きく上昇している。技術領域において不足しているスキルとして、AIの専門知識は16カ月前には6位だったが、現在は最も不足しているスキルとなっている。これは過去15年間における最も急激な変化だ。
10人中9人の回答者は「自社でAIの導入を試験的に進めるか、投資をしている」と答えており、これは2023年の59%から大きく増加している。一方、3分の2以上のリーダーは「現時点では、AIから明確な投資効果を得られていない」と答えている。
AIの導入は、依然として企業における重要な課題だ。経営陣は主要な業務プロセスに自動化を組み込むことで生産性の向上を目指してきた。しかし、高い期待があるにもかかわらず、多くのプロジェクトが実験段階から抜け出せずにいる(注2)。
データの不足や財務的な制約をはじめとして(注3)、AIの本格的な導入を妨げる障害は複数存在する。差し迫ったスキル不足も企業のAI導入計画を鈍らせる要因となっている。
Nash SquaredのCEO(最高経営責任者)を務めるベブ・ホワイト氏は調査発表の中で次のように述べた(注4)。
「AIは新しい領域であり、正解のためのガイドラインが存在しない。利用可能な範囲で正式な研修を実施し、IT部門の人材のみならずIT以外の部門に所属する従業員を再教育して人材の裾野を広げ、現場での試行錯誤、知識の共有および継承などの複数のアプローチと組み合わせていくべきだ。AIを組み込んだ新たな業務運営モデルの構築と同時にこれらの取り組みを進める必要がある」
直近2年間でAIスキルの不足は23ポイントも増加した。これはHarvey Nashが16年前に同指標の記録を開始して以来、特定のスキルとして最も急激な増加となった。教育や物流、製造、ビジネスサービス、製薬などの複数の業界にわたる多くのリーダーからAIスキルを備えた人材の不足が報告されている。
AIの導入に対する企業の意欲が着実に高まる中で、AIスキルを備えた人材の需要も増加し続けている。その結果、ギャップが拡大しているのだ。求人サイトのIndeedが発表した2025年2月のレポートによると、生成AIに関連する求人は2025年1月に急増し(注5)、前年同月比で約3倍になったという。
(注1)AI creates the world’s biggest tech skills shortage in over 15 years, finds Nash Squared/Harvey Nash report(Harvey Nash)
(注2)Stuck in the pilot phase: Enterprises grapple with generative AI ROI(CIO Dive)
(注3)How CIOs can course-correct data strategies with AI goals in mind(CIO Dive)
(注4)AI creates the world’s biggest tech skills shortage in over 15 years, finds Nash Squared/Harvey Nash report(Nash Squared)
(注5)Generative AI job postings nearly tripled year-over-year: Indeed(CIO Dive)
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