AIアシスタントは幻滅期へ、次の主役は? Gartner、働き方と人材のハイプ・サイクル2025年版を発表AIニュースピックアップ

Gartnerは、未来の働き方と人材戦略を4視点・33技術で整理した2025年版ハイプ・サイクルを発表した。生成AIや人材マーケットプレースなどの革新が進む中、デジタル・ワークプレース構築と柔軟な働き方の実現が競争力の鍵となるとされる。

» 2025年08月21日 08時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

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 ガートナージャパン(以下、Gartner)は2025年8月19日、「日本における未来の働き方と人材のハイプ・サイクル:2025年」を発表した。これは、企業が直面する働き方の変革とそれを支える技術や人材戦略を体系的に整理したものだ。

Gartnerが描く、AIと共に働く未来

 企業を取り巻く環境は急速に変化しており、デジタルテクノロジーを経営戦略に取り込み、短期的、長期的な視点でワークプレースを進化させることが不可欠だ。Gartnerでディレクターアナリストを務める針生恵理氏は「生成AIやAIエージェントといった技術は働き方を大きく変革し得る。これを効果的に活用できる企業は、ワークスタイルを時代に適合させることで成長と持続可能性を実現できる」と述べ、柔軟で快適な働き方の実現が競争力の確保につながると指摘している。

 今回のハイプ・サイクルは、(1)ワークプレース・インフラストラクチャの近代化、(2)人と組織の在り方や人材育成、(3)新しい働き方を支える仕組み、(4)新興技術とデジタルトランスフォーメーション(DX)関連、と未来の働き方を理解するために4つの観点から33の技術やトレンドを取り上げている。

日本における未来の働き方と人材のハイプ・サイクル(出典:Gartnerのプレスリリース)

 2025年版における特徴として、まずAI関連技術の比重が大きい点が挙げられる。ワークプレースの近代化領域ではAI PCやAIによる音声認識議事録作成ツール、新しい働き方の領域では日常型AIやAIエージェント、ノーコード・エージェント・ビルダーなどが示され、AIと共存する働き方の輪郭がいっそう明確になっている。

 次に、人材や組織に関連するトレンドの進化が注目される。スキルベースで人材を管理する社内人材マーケットプレース、成果と学習を結び付けるアジャイル・ラーニング、AIリテラシーを含む教育施策などが挙げられ、人材育成と組織運営の新しい枠組みが提示されている。

 Gartnerは、時間や場所にとらわれず働くことが可能となり、生産性や俊敏性を高めるための環境を「デジタル・ワークプレース」と定義している。これは単なるデジタル化にとどまらず、組織の在り方や人材の成長を含め、企業戦略の一部として位置付けられている。

 企業の多くはハイブリッドな勤務形態を日常的に取り入れる段階にあるが、未来志向の働き方を再検討する動きも広がっている。人材を中心に据えた環境整備や、ビジネス部門・人事部門との協議を通じ、自社を魅力ある組織とする取り組みが求められている。その実現にはデジタル・ワークプレースを支える技術と、それを活用する能力の獲得が不可欠となっている。

 針生氏は「未来の働き方はテクノロジーの革新と人材の進化により現在とは大きく異なる姿となる。デジタルを前提とした新しいワークプレースを創造するためには、本ハイプ・サイクルを活用して革新的な技術の成熟度を把握し、戦略的導入を進める必要がある」と強調する。

 ハイプ・サイクルは、技術革新が過度に注目される段階から、幻滅期を経て、最終的に市場での役割が確立される過程を描いた枠組みだ。Gartnerはこれを通じて、イノベーションの成熟度や採用度を可視化し、実際のビジネス課題や新しい機会との関連を明らかにしている。対象となるイノベーションには特定の技術だけでなく、方法論や戦略、運用モデル、管理技法や標準、能力や概念なども含まれる。

 Gartnerは毎年、100以上のハイプ・サイクルを公表しており、企業は1500を超えるイノベーションの動向を追跡できるようになっている。今回の「未来の働き方と人材」のハイプ・サイクルもその一環とされ、今後の企業活動における指針となる。

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