IBMはAIエージェントに関する日本企業の導入状況と将来展望を調査し、現在3%の導入率が2026年には25%へ拡大すると予測している。経営層はAIを業務の中核と位置付け、業務効率や財務成果への寄与を期待している。
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日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)は2025年9月12日、AIエージェントおよびエージェント型AIに関する調査の日本版『AIを「投資」から「価値創出」へ』を公開した。本調査は世界の経営層2900人を対象としたグローバル調査の一環で、日本における動向を明らかにしている。
エージェント型AIを活用した業務プロセスは現在3%にとどまっているが、2026年には25%へ拡大する見通しが調査により明らかにされている。回答した経営層の70%がエージェント型AIを自社の将来にとって不可欠と位置付けており、試験導入を奨励する姿勢が示されている。企業におけるデジタル化の加速に伴い、AIエージェントはインテリジェント・オートメーションを発展させる手段として認識されつつある。
経営層の83%は2026年までに業務効率を高めることを見込んでおり、71%は業務環境の変化に自律的に適応するAIエージェントの役割に期待を寄せている。IBMでAIサービスを担当するバイス・プレジデント兼シニア・パートナーのフランチェスコ・ブレーナ氏は、サプライチェーンや人事などの中核領域へのエージェント型AIの適用は生産性向上のみならず財務成果につながるとの見解を示した。その上で、既存業務に部分的に適用するだけでは効果が限定されるため、プロセスや体験の抜本的見直し、AIエージェントの統合的な調整、データ基盤の最適化が必要と強調した。
調査ではエージェント型AI導入がもたらす利点として次の5点を挙げている(括弧内は回答した人の割合)。
AI投資動向については2024年時点でIT予算の12%を占めており、2026年には20%に拡大すると予測されている。AI投資の64%は中核業務に集中し、場当たり的に導入する企業は19%から6%へ減少すると見込まれている。約25%の企業はAIを前提とした業務再設計を推進する「AIファースト」の方針を採用しており、その半数以上が収益成長率や営業利益率の改善を実感している。
日本企業が直面する課題として、業務パッケージの未活用、業務標準化の遅れ、データのサイロ化が指摘されている。これらを解消するためには、部分的な最適化にとどまらず全社的な観点からAI導入を捉え、業務プロセス全体の再設計やデータ統合、KPIに基づいた運営が求められるとされる。
本調査は、IBM Institute for Business Value(IBV)がオックスフォード・エコノミクス社と共同で2025年に実施した2つの調査を基盤としている。「AI at the core survey」は18業種19地域の経営層2500人を対象に、「Agentic AI pulse survey」は11業種6カ国のCxO職400人を対象に行われた。分析には相関分析や回帰分析、共分散構造分析などの手法が用いられ、AIの導入が収益、利益率、生産性、資源活用に与える影響を検証している。
IBMは今回の調査結果を通じて、AIエージェントが企業活動に浸透し、意思決定や業務効率化を支える存在となる道筋を提示している。企業にとっては戦略的な投資と業務全体の再設計を通じて、AIの可能性を持続的な価値へ変換する姿勢が問われている。
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