バイブコーディングは「思考停止」か? “爆速開発”を目指す企業のジレンマCIO Dive

開発効率を飛躍させると期待されるAI。しかし、多くの企業がその導入を進める裏で、ITリーダーはある共通の懸念を抱いている。AIへの過度な依存がもたらしかねない、開発者のキャリアと成果物の品質に対するリスクとは。

» 2025年10月29日 08時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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CIO Dive

 オンラインデザインプラットフォームを運営するCanvaが2025年9月1日(現地時間、以下同)の週に発表した調査によると(注1)、ITリーダーたちは開発者の間でAIの利用が拡大することによりスキルの成長が妨げられるのではないかと懸念しているようだ。同社はテクノロジーに関する意思決定者300人を対象に調査を実施した。

AI依存の危うさ

 ITリーダーの約3分の1が、説明責任を伴わないAIへの過度な依存を最も大きな懸念として挙げた。また、5人に1人以上の回答者が「AIの利用の拡大によって若手従業員のキャリアが行き詰まることを懸念している」と答えた。

 報告書によると、テクノロジーの意思決定者のほぼ全員に該当する95%が、AIが生成したコードに伴うリスクを警戒している。品質基準を維持する取り組みとして、ITリーダーの93%は「AIが生成したコードが本番環境に導入される前に、常にまたは頻繁にレビューしている」と回答した。

 今や大半の企業は、開発者が日常の業務フローでAIを活用することを期待している。AIの導入によってプロセスや必要とされるスキル、リスクに変化が起こっている。

 Canvaのブレンダン・ハンフリーズ氏(最高技術責任者)は、報告書に添えた文書で次のように述べた。

 「新しい時代で成功するエンジニアは、自らの思考や成果物の品質を高めるためにAIを活用しており、それらをAIに置き換えようとしているわけではない」

 組織がAIに依存したソフトウェア開発手法を採用する場合、ガバナンスと監督が極めて重要になる。

 食品メーカーであるMondelēz Internationalのグローバルクラウドエンジニアリング部門に所属するショーン・ティボー氏(ディレクター)は、2025年の夏に『CIO Dive』に対して次のように語った(注2)。

 「私たちは、確実に機能し、持続可能な企業向けソフトウェアを提供しようとしている。私たちは自らが使用し生成するコードに対して、依然として高度な責任を負わなければならない。その中には説明責任も含まれる」

 Mondelēz Internationalはバイブコーディング(自然言語でAIに指示を出してアプリケーションを構築する手法)を慎重に試してきた。このような取り組みを進めているのは同社だけではない。企業は最新の開発手法を活用しつつ、基準と有効性を維持しようとしているのだ。

 金融サービス企業であるValmark Financial Groupのジェフ・ムーア氏(最高情報責任者)は2025年9月1日週の「LinkedIn」への投稿で、2つのユースケースを取り上げた(注3)。一つは生命保険契約の2次売買向けの自動見積もりツールの構築であり、もう一つは「Zoom」連携用のコンソールの構築である。

 ムーア氏は「場合によってバイブコーディングは開発を迅速化させ、これまで手の届かなかったソリューションを従業員自身が構築できるようにする可能性がある」と述べた。

 「より複雑なシナリオの場合、アプリが設計パターンやセキュリティのベストプラクティスに従ったものになり、またチームがサポート可能なものになるように経験豊富なパートナーが見守る必要があるだろう」(ムーア氏)

 ムーア氏は、CIO(最高情報責任者)とそのチームに対し、潜在的なユースケースを検討する際には、変更点を追跡し、修正のための時間を確保し、開発のコンテキストを常に念頭に置くべきだと提言した。

 急速に進化するAIの状況は企業に課題を突き付けている。それは誇大な宣伝に満ちた主張がAIの欠点や落とし穴という現実の問題を覆い隠してしまうという課題だ(注4)。

 服飾メーカーであるGapのスヴェン・ゲルジェッツ氏(エグゼクティブバイスプレジデント兼最高技術責任者)によると、バイブコーディングやローコードツールは、コンセプトを実行可能なアプリケーションへと直ちに変換できる優れた可能性を生み出しているという。

 ゲルジェッツ氏は2025年9月1日のLinkedInへの投稿で、「イノベーションの面では素晴らしいが、特定の取り組みに集中するという面では最悪だ」と述べた(注5)。

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