6.5年かかるコード解析を20時間で完了 4.6億行のレガシーコードに挑んだClaude活用術AIニュースピックアップ

Anthropicは、海外政府機関がAI「Claude」や「Claude Code」を導入した事例を公開。従来なら約6.5年を要する4.6億行超のレガシーコード解析をわずか約20時間で完了し、技術的負債や脆弱性の解消で成果を上げた。

» 2026年07月10日 07時00分 公開
[ITmedia]

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 Anthropicは2026年7月6日(現地時間)、カナダのアルバータ州政府がAI「Claude」と「Claude Code」を活用し、大規模なサイバーセキュリティ対策と情報システム刷新に取り組んだ事例を公表した。州政府は2025年からClaude OpusとClaude Sonnetを採用し、4億6600万行のソースコードを約20時間で解析し、脆弱(ぜいじゃく)性の発見や修正、保守性向上といった成果を得た。

6.5年かかる膨大なコード解析を「20時間」で完了した方法

 行政機関がAIを利用して情報システム保全へ取り組む事例として紹介された。行政サービスは住民生活を支える基盤であり、多数の情報システムへ依存する半面、古いソフトウェアや十分な記録が残っていないコードを抱える例が少なくない。アルバータ州政府は、自らの取り組みを技術文書として公開し、他の政府機関でも参考資料として利用できる形を整えた。

 アルバータ州技術革新大臣のネイト・グルビッシュ氏は、「行政には住民から預かる機密情報を守る責務がある」と説明した。その上で、AI活用によって従来なら長期間を要した作業を短時間で実施できたと評価し、AI時代の行政運営を示す事例との認識を示した。

 同省は州内27省庁の情報システムを管理する。対象には社会福祉や公共安全、山火事対応など幅広い分野が含まれ、約1280件のアプリケーションと3400件のコードリポジトリを保有する。その多くは体系的なセキュリティの点検を受けておらず、安全性不足、未修正の不具合、旧式ソフトウェアなど技術的負債が積み重なっていた。

 情報システムには税務情報や政府調達情報、社会福祉関連記録など機密性の高いデータが保存されている。州政府は2025年、保守性向上と安全性確保を目的とする専門チームを設置し、Claude活用に着手した。

 解析作業ではClaude CodeとOpus、Sonnetを組み合わせ、約50体のエージェントが並列で動作した。対象コード全体から脆弱性、基盤設備や配備工程の弱点、技術文書不足などを調査した。解析は二段階方式を採用し、最初に既知の問題を規則エンジンで抽出し、その後Claudeが対象箇所を精査した。検出結果は該当ファイル名と行番号付きで提示され、開発担当者が内容を確認できる構成となった。

 対象は州政府保有の全リポジトリに及んだ。発見結果には従来型自動診断ツールで見逃された内容も含まれた。州政府によれば、この規模の確認作業は従来手法なら約6年半を要する見込みだったが、Claude活用によって約20時間で終了した。

25年前のレガシーを数日で再構築、AIエージェントによる自動検証も

 解析後は修正作業もClaude Codeを活用した。脆弱性が確認された箇所では修正版コード生成と試験実施、ビルドまで担当した。自動試験環境を備えないシステムにおいて、試験コードを先に作成して安全確認基盤を整備した。

 既存コードが古く修正効率に乏しい案件では新しい開発言語へ置き換えて再構築した。約25年前にJavaで手作業開発された補助金プログラムのポータルは、当初5カ月かかった構築作業を数日規模で再構築できた事例として紹介された。ただし、生成内容は開発担当者が確認し、承認後に導入された。

 同州政府は開発工程全体にAIエージェント群も導入した。レッドチーム役は外部攻撃者の視点から侵入経路や悪用方法を分析する。ブルーチーム役は国際的な安全基準へ照らし、防御状況を評価し、修正対象ファイルを示す改善計画を作成する。別のエージェントはコード品質や住民を対象とした文章表現も確認する。各アプリケーションは約95項目の安全管理基準で評価される仕組みとなった。これらはClaude Agent SDKで構築された。

職員数千人と市民1万人が学ぶ「AI Academy」、他省庁への横展開も視野に

 州政府は情報システム保全だけでなく、人材育成にもAIを導入した。Alberta AI Academyでは行政職員と一般市民へAI利用方法を学ぶ機会を提供している。行政職員は数千人、市民は1万人超が受講し、プロンプト作成から業務利用まで学習した。州の技術・イノベーション省は、取り組みを特定部署へ限定せず、州内各省庁へ広げる方針を掲げた。今後はClaudeがコード作成、確認、配備支援を担う役割を拡充し、技術者と協力して新規ソフトウェアや各種ツール開発も担う計画だ。

 州政府は情報システム刷新も継続する。ある省庁では185件の旧式アプリケーションが稼働中で、維持費増加や更新困難が課題となっている。Claude Codeで各システム機能を解析し、新しい開発言語と設計規則を採用した16件の再利用可能なアプリケーションへ集約する構想を掲げた。複雑さの軽減、維持費抑制、刷新期間短縮を狙う。

 Anthropicは、アルバータ州政府が公開した技術文書は同様の課題を抱える州政府や連邦政府などにも参考資料となるとの見方を示した。州政府は同年7月にエドモントンで産業を対象とした催事を開き、得られた知見を紹介する。秋には州全体へ取り組みを拡張する計画も明らかにした。Anthropicは州政府との協力を継続し、安全性向上へ役立つ知見の共有を後押しするとした。

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