「単なる移行に価値はない」 Gartnerが指摘するSAP ECC移行の真の課題CIO Dive

SAP ECCのサポート終了が2027年に迫る中、IBMはAIで移行を効率化する新ツールを発表した。だが専門家は、単なるシステム移行では付加価値は生まないと指摘する。

» 2026年01月21日 07時00分 公開
[Makenzie HollandCIO Dive]

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筆者紹介:マッケンジー・ホランド(Makenzie Holland)(「CIO Dive」シニアニュースライター)

2015年に米国インディアナ州立大学ブルーミントン校でジャーナリズムの学士号を取得。米連邦政府の技術政策担当記者、『Wilmington StarNews』記者、『Wabash Plain Dealer』記者(犯罪・教育担当)を経て現職。

 「SAP ECC」(以下、ECC)のサポート終了期限が2027年に迫る中、IBMはAIエージェントを活用して「SAP S/4HANA」(以下、S/4HANA)への移行を効率化する新ツールを発表した。AIによるコード修正の自動化などで移行のスピードアップを図る。

 一方で、専門家からは「ツールの導入だけでは不十分」との指摘も出ている。多くの企業が抱える過去のカスタマイズをどう整理し、移行後のシステムでいかに付加価値を生み出すか。

迫るSAP ECCのサポート終了期限 移行を阻む課題

 IBMは2025年12月15日(現地時間、以下同)(注1)、生成AIおよびAIエージェントによってモダナイゼーションの取り組みを簡素化および迅速化することを目的とした「IBM Consulting Application Management Suite for SAP」を立ち上げたと発表した。

 S/4HANAへの移行にはメリットがある一方、IBMは「企業のERPシステムの移行は、レガシー環境の複雑さや分断されたプロセス、多大なリソースを要する運用によって遅れがちだ」と述べた。

 SAPはECCのサポートを2027年に終了し、ERPの主力であるS/4HANAに顧客を移行させる方針だ。しかし、IBMが引用した「Americas’ SAP Users’ Group」の調査によると(注2)、ECCのサポート終了期限が迫る中、S/4HANAを既に本番稼働させている企業は全体の45%にとどまっているという。

 企業向けの複雑な移行プロジェクトを進める戦略的なツールとして、AIエージェントを打ち出す動きが広がっている。しかし、SAPのECCは個別に高度なカスタマイズが施されているケースが多く、アップグレードには特有の課題を伴う。

 IBMのツールは、S/4HANAへの移行を支援する製品群の中に加わった最新のソリューションだ(注3)。発表によると、同ツールは顧客ごとの開発ルールに沿ったコード修正を自動で作成できる他、事前監視や影響範囲の分析、業務プロセスの流れをさかのぼって把握する機能を備えているという。

 SAPもERP移行を支援するため、自社のCopilotである「Joule」の学習を進め、2025年の初めにエージェント型の自動化機能を製品に追加した(注4)。また、グローバルなITインフラ企業であるKyndrylは、自社が18カ月にわたって実施したERP移行の経験を踏まえ、企業のS/4HANAへのデータ移行を容易にするコンサルティングツールを同年4月にリリースしている(注5)。

 このような中、調査企業であるGartnerのデビッド・ペニー氏(シニアディレクター アナリスト)は移行に伴う問題点を指摘した。それは、ECCを使用する企業にとっての根本的な課題である「価値の創出」に、移行ツールが十分に向き合えていない点だという。

 ペニー氏は、SAPの顧客は長年にわたってECCのシステムをカスタマイズしており、その過程で多くの技術的な負債を抱えたと指摘する。つまり、S/4HANAへの移行は、新しいシステムを従来のシステムと同じように動かすために、カスタマイズのアップグレードやコードの書き直しに多額の資金を投じることを意味するのだ。

 ペニー氏は「ECCのカスタマイズこそ、誰もが認識していながら真正面から向き合えていない最大の問題だ」と述べている。

 また、ペニー氏は次のようにも語った。

 「S/4HANAへの移行を実現するツールは何年も前から提供されており、現在は数多く存在している。年々改良も重ねられているだろう。しかし、それらのツールが実現するのはS/4HANAへの移行でしかない。システムを移行しただけで、そこに付加価値が生まれるとは限らないのだ」

 ペニー氏は、移行ツールが既存のカスタマイズを整理および解消し、S/4HANAの新機能へより迅速にアクセスできるようにするものにならない限り、顧客が本格的に移行に踏み切ることはないと指摘した。

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