Anthropicが公表した新指標によると、AIの影響を受けにくい人々が約3割存在する。この3割の人々の共通点と、具体的な職種とは。
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「Claude」を提供している、AI開発企業のAnthropicがこのほど、大規模言語モデル(LLM)が労働市場に与える影響を測定する新指標を公表した。同指標によって、AIの影響を受けやすい人々の属性が明らかになる一方で、AIによる影響をほとんど受けていない人々が約3割存在することも分かった。
同社の分析によれば、AIの影響を受けやすい人々には次のような特徴がある。年齢が高く、女性であり、高学歴・高所得である可能性が高い。
では、AIの影響を受けにくい約3割の人々にはどのような共通点があるのだろうか。年齢や学歴、所得以外の要素は何か。
Anthropicによると、AIの影響を受けにくい3割の人々は、PCだけでは完結しない、身体作業や対面業務が中心の職業に従事している。反対に、文章作成やデータ処理など、デジタル環境で完結するタスクが多い職業に就いている人ほどAIの影響を受けやすい傾向にある。
Anthropicは、新指標を「観測ベースの曝露度(observed exposure)」と名付けた。一般的に「曝露度」とは、ウイルスや放射線、化学物質などにどの程度さらされているかを示す指標だ。新指標では、ある職業のタスクがLLMで理論的に処理可能かどうかに加え、ビジネス用途でAIによる自動化や補助利用が観測されているかどうかを統合して暴露度を算出する。従来の研究が理論的な可能性のみを扱っているのに対し、実利用データを組み込んだ点が特徴だ。
具体的には、AIが労働市場や経済に与える影響を分析する同社の経済指標「Anthropic Economic Index」と、米国の職業データベース「O*NET」に登録された約800業種のタスク情報や、先行研究による理論的な曝露度評価を組み合わせて算出している。
ここで重要なのは、この新指標が「LLMが理論的に高速化できるタスクのうち、実際にビジネス環境において自動化用途で利用されているものはどれか」を定量化している点だ。「コード」や「数字」といったデジタルデータを主に扱っている、プログラマーや金融アナリストの曝露度は高い。一方で、料理人や整備士、バーテンダーといった職種は影響を受けにくいとされている。これらの職種のタスクの多くは物理空間で遂行されており、現在のところ、AIが操作できる「手足」はほぼ存在していない。
米国労働統計局(BLS)が2025年に公表した2024〜2034年の雇用予測と照らし合わせると、曝露度が10ポイント上昇するごとに雇用成長予測が0.6ポイント低下していることが分かった。つまりAIの影響を受けやすい職業ほど、BLSは今後10年の雇用の伸びを低く見積もっている。Anthropicは、新指標は労働市場の専門機関による予測と一定の整合性を持っているとする。ただし、その相関がわずかであることに注意が必要だ。
Anthropicによると、現時点におけるデータでは、曝露度の高い職種の雇用は減少していない。OpenAIによる2022年11月の「ChatGPT」公開後、AIによる影響を強く受けた「曝露度が上位25%のグループ」と、「曝露が観測されなかった約3割のグループ」をAnthropicが比較したところ、両グループ間の失業率に、統計的に有意な差は認められなかった。
ただし、22〜25歳の若年層には変化の兆しもあるようだ。曝露度が高い職種への若年層の新規就職率は、2024年以降低下傾向にある。ChatGPT公開前と比較すると、約14%減少した。ただし、この数値は、統計的有意性がかろうじて認められる水準にとどまっており、Anthropicは「AIによる代替が起きたとは結論付けられない」としている。
同社は、これらの職種への若年層の就職率が低下している要因は複数あるとみている。曝露度が高い職種における新規採用が減ったことや、別職種への転職や進学、労働市場から退出している可能性がある。
新指標が示したのは、AIの影響を受けやすい職種とその属性、そしてAI利用がほとんど観測されなかった約3割の労働者層の存在だ。一方で、AIによる代替が雇用減に結び付いているかどうかは、現時点の統計データから判別するのは難しい。
Anthropicは新指標の目的を「AIがもたらす影響が明確になる前に検知する枠組みの構築」だとしている。今後、データ蓄積が進み、「LLMで理論的に処理可能な業務」と「実際にAIで遂行されている業務」のギャップが縮小すれば、労働市場が影響を受ける可能性があるからだ。
Anthropicの新指標における曝露度が高い職業と低い職業の具体例は、次の通りだ。
| 曝露度が高い職業 | 曝露度が低い職業 |
|---|---|
| プログラマー(Computer Programmers、タスクの75%をAIがカバー) | 料理人(Cooks) |
| データ入力作業者(Data Entry Keyers、同67%) | バイク整備士(Motorcycle Mechanics) |
| カスタマーサービス担当者(Customer Service Representatives) | ライフセーバー(Lifeguards) |
| 金融アナリスト(Financial Analysts) | バーテンダー(bartender) |
| ― | 洗い場スタッフ(Dishwashers) |
| ― | 試着室スタッフ(Dressing Room Attendants) |
※(編注)職業の名称は米国労働統計局の分類に基づいている。
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