「パブリッククラウド支出の25%超が無駄」 AIインフラのコスト増と次の一手【調査】

Broadcomの調査によると、企業AIの本番環境をパブリックからプライベートクラウドへ移行する動きが本格化している。背景には、パブリッククラウドにおける「25%超のコストの無駄」や、地政学リスクに伴うデータ主権の確保がある。

» 2026年06月24日 07時00分 公開
[ITmedia]

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 Broadcomは2026年6月9日(現地時間)、企業のAI基盤選定に関する世界調査の報告書「The Private Cloud Outlook 2026 - The AI Tipping Point」を公表した。世界8カ国の上級ITリーダー1800人を対象とした調査から、企業AIの本番運用環境がパブリッククラウドからプライベートクラウドへと移行しつつある実態が浮き彫りになった。

 AI戦略の初期段階では、APIの充実度やGPUリソースの確保、これまでの投資の慣習から「AIはハイパースケーラーのクラウドで動かすもの」という見方が主流だった。しかし、本番環境で稼働するAIワークロードが拡大し、インフラ投資や経営層の優先事項が変化する中で、AIインフラのコストやガバナンスを見直し、プライベートクラウドを選択する動きが鮮明になっているという。

本番AIの配置先はプライベートクラウドが優勢か

 報告書によると、2025年は企業の56%が本番AI推論の主要環境としてパブリッククラウドを利用していたが、2026年は41%に低下した。プライベートクラウドで本番推論を稼働済み、もしくは稼働を計画する企業は56%に達した。パブリッククラウドからプライベートクラウドへワークロードを移している、または移行を検討している企業の43%は、その対象としてAIトレーニングや大規模言語モデル(LLM)、推論を挙げた。このAI分野は前年調査には存在しなかった区分だ。回帰を考える企業は2025年の69%から83%に増え、半数は既に何らかのワークロードを移した。

 Broadcomは、AIの配置先がプライベートクラウドへと移行している主な要因として、「セキュリティと制御」「コスト」「ガバナンス」の3点を挙げた。これらは従来、機密データや基幹アプリケーションの保管先としてプライベートクラウドが選ばれてきた理由と一致する。

 特に本番環境におけるAI運用は、トラブル発生時のビジネスインパクトが大きくなりやすく、インフラ選定では慎重な判断が求められる。そのため、「高度なセキュリティ」「低遅延」「高い業務重要度」「データ集約型」といった要件を持つワークロードほど、プライベートクラウドが支持される傾向にある。

 コスト面の変化も大きい。今回の調査で、パブリッククラウドへの懸念項目としてコストがセキュリティを上回った。ITリーダーの97%は「パブリッククラウド支出の一部が無駄になっている」と考え、52%は無駄が総支出の25%を超えると答えた。生成AIやエージェント型AIの利用拡大も、コスト管理を難しくしている。ITリーダーの62%は、AIインフラ費用について「かなり懸念している」または「極めて懸念している」と回答した。

 3年間でプライベートクラウド投資を増やす意向を示す比率は、純増ベースで51%から72%に上昇した。投資の伸びはパブリッククラウドの2倍超となり、39%の組織がコスト予測のしやすさを理由に挙げた。変動型の従量課金を前提にAI構想を組んだ企業は、予算判断を見直す局面に入った。

 インフラ選定において、地政学リスクと法規制への対応も無視できない要素となっている。調査によると、ITリーダーの86%が「地政学的・規制要因がIT戦略と運用に直接影響している」と回答した。

 具体的な懸念材料としては、データ主権やデータの国内保存を求める「データ所在要件」が54%と最多で、次いで地域ごとに異なる「法域コンプライアンスの要件」が51%となった。国境を越えるグローバルビジネスでは、データを保管する場所が、ワークロードを実行する場所の判断にも関わってくる。そのため、機密データや専有データを扱うAI運用には、初期の設計段階からガバナンスと統制を組み込めるプライベートクラウドのような環境が求められる。

 実際に、ワークロードの配置を決める最大の要因として32%が「セキュリティとコンプライアンス」を挙げた。さらに、AIの導入に伴う新たなインフラ要件としても、「データ保護とプライバシー」(37%)や「セキュリティと制御」(36%)が上位を占めており、安全性の確保が最優先事項となっていることが伺える。

 運用面において、人材不足が課題として浮上した。ITリーダーが挙げた技能不足の首位は「AIインフラと運用」で40%、「クラウドセキュリティ運用」が38%、「Kubernetes運用」が37%だった。技能不足を補うため、企業の81%はクラウド関連の業務を全面的に外部委託するか、専門サービスを利用する。Broadcomは、適切な技術パートナーの確保に加え、運用の簡素化が不可欠だと指摘した。統合され、統制の効いたプライベートクラウド環境に標準化すれば、必要な専門人材を減らし、運用の分断を抑え、組織内の責任を明確にできるとした。

 Broadcomは、今回の調査が2年にわたる変化の到達点を示すものだと位置付けた。企業ITはAIの転換点に達し、本番AIが求める安全性やコスト予測性、データ主権、ガバナンスを満たす運用環境としてプライベートクラウドが選ばれているとの見方を示した。

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