企業の業務に向けたAI需要はどのような動きなのか。AI需要の盛り上がりと、ITサービス企業の収益は直結するのか。富士通とNECのCFOによる直近決算会見での発言から考察する。
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AIブームがヒートアップする中、企業のさまざまな業務に向けたAI需要はどのような動きを見せているのか。国内ITサービス事業大手の富士通とNECが相次いで発表した2026年度(2027年3月期)第1四半期(2026年4〜6月)の決算会見から、受注状況および両社CFO(最高財務責任者)の発言に注目し、企業の業務に向けたAI需要について考察したい。
富士通が2026年7月30日に発表したITサービス(同社は「サービスソリューション」と呼ぶ)における第1四半期の国内受注状況は、全体で前年同期比110%となった。
内訳は次の通りだ。
エンタープライズ分野が前年同期比101%で、そのうち製造(自動車・組立・化学ほか)が同106%、流通(小売・商社・食品ほか)が同96%。パブリック分野が同114%で、そのうち金融(銀行・証券・保険ほか)が同91%、パブリック&ヘルスケアが同115%、ミッションクリティカル・ナショナルセキュリティほかが同139%だった(表1)。
第1四半期の受注状況について、同社の磯部武司氏(代表取締役副社長 CFO)は発表会見で次のように説明した。
「全体としては、前年度から引き続きDX(デジタルトランスフォーメーション)およびモダナイゼーションのデマンドが広い範囲で継続した」
「エンタープライズの製造では、全体と同様、広い範囲で強いデマンドが継続した。DXやモダナイゼーションを中心に、AI組み込み型でより付加価値の高い案件も増えている。また、次世代システム基盤としてのソブリンクラウドの受注獲得もあった。一方、流通は前年同期に獲得した大型商談の反動で前年同期比96%となったが、デマンドは高い水準で推移している。エンタープライズでは業種によって受注にデコボコがあるが、製造および流通とも受注残と確度の高いパイプラインは二桁伸長で積み上がっている」
「パブリックの金融は前年同期比91%だったが、これはメガバンク向け基幹システムの商談を獲得した前年同期の反動によるものだ。パブリック&ヘルスケアは自治体システムの標準化や大学向けなどの教育向けDX、ヘルスケアでもAIを組み込んで経営効果を高めた医療向けDXなどのデマンドが高く、着実な商談獲得が進んだ。ミッションクリティカル・ナショナルセキュリティほかが139%と高い伸長だったのは、防衛関連で大型商談を獲得したからだ。前年同期も二桁伸長だったが、それを大きく上回る伸びとなっている」
企業の業務に向けたAI需要については、どのような手応えを感じているのか。磯部氏は次のように述べた。
「お客さまはAIを活用して、システム開発を効率化、自動化し、品質を上げることはもちろん、業務プロセスの効率化や自動化、さらには高度な経営判断をしたいというニーズが非常に強い。そうしたAIの活用は、これまでのDXとつながっているので、DXからAX(AIトランスフォーメーション)へと取り組みを広げようと動き始めている。これが、多くのお客さまの現状で、こうした動きが本格化するだろう。一方で、AIエージェントにおけるコストパフォーマンスや成果をどう示すかといった課題も浮き彫りになってきた。こうした課題についてはお客さまと共に動きながら着地点を探ることになるだろう」
NECが2026年7月29日に発表したITサービスにおける第1四半期の国内受注状況は、全体で前年同期比3%増となった。
内訳は、パブリック(官公・自治体・通信)が前年同期比3%増、エンタープライズ(金融・製造・流通サービス)が同6%増、子会社のアビームコンサルティングが同16%増、その他が同1%減だった(表2)。
この受注状況について、同社の雨宮邦和氏(取締役 代表執行役 副社長 兼 CFO)は発表会見で次のように説明した。
「全体としては大型案件や特需、低収益事業終息の影響を除いた実質ベースで前年同期比3%増となり、モダナイゼーション案件を中心に需要モメンタムは堅調だ。受注の積み上がり状況も順調に推移している」
「分野別では、パブリックは官公向けのデジタル化案件や通信が堅調だった。エンタープライズは金融および流通サービスで受注が伸び、いずれも伸長した。アビームは前年に続いて好調を維持している」
企業の業務に向けたAI需要については、どのような手応えを感じているのか。雨宮氏は次のように述べた。
「さまざまな業務にAIを活用しようという取り組みは、もはやどのお客さまも進め始めている。現時点では、AI活用の前提となるモダナイゼーションやDXの需要が収益につながっており、AXの取り組みが本格化するのはこれからだ。ただ、AIを活用して成果を上げるのはスピード勝負でもあるので、ここ数カ月の間に多くのお客さまでAXが本格的に動き出すのではないか。当社としては、そうしたお客さまの動きにしっかりと伴走してご支援できるように注力したい」
以上が、富士通とNECにおける今回の取材の内容だ。改めて企業の業務に向けたAI需要についての磯部氏と雨宮氏の発言を振り返ると、異口同音に「AI需要は旺盛だが、AXに向けた具体的な取り組みはこれから本格的になる。現時点ではその前提となるモダナイゼーションやDXの取り組みが本格化している」と述べている。
果たして、その先に懸念はないか。企業のAI活用に向けた取り組みについては、検討段階から本番導入になかなか進まないケースも多いようだ。その理由は、両氏も触れているようにコストパフォーマンスや成果が不透明なところがあるからだということを耳にする。今後、AI需要が収益になることは間違いないだろうが、意外にタイムラグがあるのでないかという見方もある。
加えて、この機に筆者が感じていることを述べておく。ITサービス事業者はこぞって「お客さまのAXに向けた伴走者」とうたっているが、それはAIをはじめとしたテクノロジーだけでなく、ビジネスやマネジメントのアドバイザーでありクリエイターでなければならないということだ。そうでないと、AIをビジネスやマネジメントに生かせない。これは従来のITやデジタルと何ら変わらない(同じテクノロジーなので当たり前だが)。
さらに言えば、【ユーザー企業側にも同様の姿勢が問われる。ビジネス変革の設計をコンサルティング企業に依頼すべきではない】。何をどうトランスフォーメーションして、どのような成果を上げるかは、外部に頼らず当該企業が自ら考えて実行すべきだ。それができない企業は、もはやAI時代では生き残れないだろう。
以上、このところのAXの取材で痛感していることを申し添えておきたい。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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