AIエージェントだけで業務は回らない? Blue Prismが始めた「AIとRPAの分業」

生成AIを導入する企業は増えたが、業務プロセスに組み込めている企業は少ない。Blue Prismは、その背景に「3つの壁」があると見る。同社が日本で提供を始めた「WorkHQ」は、AIエージェントとRPAに何を任せるのか。

» 2026年10月09日 09時00分 公開
[大島広嵩,ITmedia]

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 業務自動化ソフトウェアを手掛けるSS&C Blue Prismの日本法人Blue Prism(以下、Blue Prism)は2026年10月7日、エンタープライズ向けエージェンティック・オートメーション基盤「SS&C Blue Prism WorkHQ」(以下、WorkHQ)の日本語版の提供を開始した。

 人とAIエージェント、API、RPAを1つの環境で連携させ、統制を利かせながら業務を自動化する基盤だ。特徴は、業務の自動化をAIエージェントだけに任せず、デジタルワーカー(Blue PrismのRPAのソフトウェアロボット)と役割を分けて組み合わせる点にある。

AIの業務組み込みを阻む「3つの壁」とは

 独立行政法人 情報処理推進機構(以下、IPA)の「DX動向2026」(注1)によると、生成AIを導入している企業の割合は前年度調査の22.6%から44.0%に増えた。一方、生成AIを導入・試験利用・検討している企業に組織での利用状況を尋ねた結果では、「個人で業務利用している」が63.3%なのに対し、「部署の業務プロセスに組み込まれている」は11.9%、「全社的なサービスに組み込まれている」は18.6%にとどまる。

(注1)「DX動向2026」について(IPA)

Blue Prismの長谷太志氏

 Blue Prismは、この差の背景に「3つの壁」があると見る。同社の長谷太志氏(社長)は同日の記者説明会で、3つの壁を次のように説明した。

  1. AIと業務の壁: 生成AIの活用が個人利用や「壁打ち」にとどまり、業務プロセスの中に入っていない
  2. システム間の壁: 業務は複数のシステムにまたがり、システム間の確認や連携といった「つなぎ」の多くを人が担っている。APIのないシステムやファイアウォールの内側にあるシステムは、AIエージェントだけでは越えにくい
  3. AI自身の壁: AIの判断は確率論的で、同じ入力でも結果が揺れる。トークン課金のためコストも見通しにくい

 「課題は生成AI自体ではなく、生成AIの力を業務プロセスに組み込めていないことにある。業務に組み込む上では『統制』と『オーケストレーション』が肝になる」(長谷氏)

 Blue Prismは2022年3月、金融分野などでソフトウェアやBPOサービスを提供するSS&C Technologies(以下、SS&C)のグループに入った。WorkHQは、SS&Cが自社業務で運用した経験を基に開発した製品で、2026年4月に米国で発表された。

 SS&Cのファンド管理業務には、売買の不一致を照合する業務がある。不一致の原因は100通り以上あり、判断を伴うため、ルールベースのRPAでは自動化できなかった。現在はAIエージェントが不一致を仕分けて判断し、前後の工程はデジタルワーカーが実行する。必要に応じて人が承認する。同社によると作業時間は82分から5分に短縮された。

判断はAI、実行はデジタルワーカー

Blue Prismの内田修氏

 Blue Prismの内田修氏(副社長)は、複数のシステムにまたがる業務を最後まで確実に処理する役割には、AIエージェントよりデジタルワーカーが向く理由が2つあると説明する。

 一つは、画面操作で処理するため、APIを持たないシステムやファイアウォールの内側のシステムにも対応できることだ。もう一つは、同じ入力に同じ結果を返す決定論的な動作で、トークン課金も発生しないため、処理量が増えてもコストを予見しやすいことだ。このため同社は、判断をAIエージェントが、定型の実行をデジタルワーカーが担い、人は確度が足りない案件や想定外の例外だけを確認する分担を勧める。

 内田氏は、将来はAIエージェントだけで完結する可能性もあるとした上で、「現時点では確率論的な性質があり、エラー処理も含めた処理の安定性に課題がある」と述べた。

 統制の面では、WorkHQは環境分離やロールベースのアクセス制御(RBAC)、承認ステップ、各ステップの入出力の記録などを備える。AIそのものの統制はアドオンの「SS&C AI Gateway」が担い、承認済みモデルやトークン上限の管理、プロンプトインジェクション対策、全プロンプトとレスポンスの監査ログ記録に対応する。

 LLMはAIエージェントごとに選べ、顧客が契約するAnthropicやOpenAIのLLMの他、「Amazon Bedrock」経由で利用するLLMなども持ち込める。既存のBlue Prismのデジタルワーカーは、移行やリプレースをせずにそのまま使えるという。

 記者説明会では、請求書の登録業務を自動化するデモを披露した。AIエージェントが「Microsoft Outlook」で受信したメールと添付ファイルを読み、請求書かどうかを判定して項目を抽出・照合する。合計額が30万円以上の案件や不一致がある案件だけを「要承認」として担当者に回し、承認後はデジタルワーカーがAPIを持たない社内の請求書システムに登録する。

 価格体系は、ワークフローの年間実行回数を前払いで購入するモデルだ。エージェント数やワークフロー設計数、API呼び出し数、同時実行数は無制限としている。実行回数はワークフローを実行した回数で数え、デモのようなワークフローなら、1回の実行で複数件をまとめて処理しても1回となる。

 AI Gatewayは上記の価格体系に含まれず、アドオンとして提供する。日本語版では、UIの日本語化に加え、日本語のドキュメントとサポートも提供する。販売はアクセンチュアや日本アイ・ビー・エムなど国内パートナー21社を通じて行う。


 統制の仕組みを重視する設計から見て、WorkHQが効果を発揮しやすいのは、金融など規制が厳しくガバナンスが求められる業界だろう。ちなみに、RPAではなく「デジタルワーカー」と呼ぶ理由を尋ねたところ、Blue Prismは当初から自社製品をデジタルワーカーと呼んでいるとのことだ。また、RPAをAIと組み合わせてより高度な業務を担う存在として位置付けるために、この呼称を使っているという。製品を比較検討する際は、AIと組み合わせて何をどこまで任せられるかに注目したい。

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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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