ボーダフォン・モバイル・オフィス(VMO)は、ボーダフォンの第3世代携帯電話ネットワークに仮想的な内線網を作り出す、他キャリアにはない特徴的なサービスだ。VMOで契約した携帯電話は月額5460円(税込み)の基本使用料金が発生するが、VMO契約の携帯電話同士ならば追加の通話料が一切発生しない。さらに、固定電話を登録しておくと、携帯電話から固定電話への通話料金も1分あたり10.5円〜15.75円(税込み)と安価だ。
しかも導入期間が短く、専用のシステムを導入する必要もない。初期投資は携帯電話の購入費用と契約事務手数料のみであり、導入に際しての投資回収が容易というメリットもある。
すでにVMOを契約している企業は、導入のしやすさとコストに惹かれて導入を決めたようだ。しかし実際に導入を済ませた企業への取材からは、意外なメリットも浮かび上がってきた。
株式会社コノエ 大阪市で、ねじ製品全般と附属する部品および関連機器並びに自社開発製品製造・卸業を営む。資本金9750万円、社員数は約120名 |
ねじおよび関連製品の製造・販売を主な業務とするコノエは、大阪から岡山にかけて11カ所の営業拠点を持つ。広範囲に広がる事業所間の通信は固定電話。また外回りの営業を中心に26台の携帯電話も契約していた。
しかし市外電話中心で11拠点が頻繁な情報の交換を行う必要があり、固定電話の通信費は月額25万円。社員に支給する携帯電話26台の通信費も、月額で約20万円かかっていた。
コノエの場合、通信コストは主に事業者間の通話に対してのものだ。このため2年前にはIPセントレックスの導入を検討したが、初期導入コストの高さがネックとなった。通信料は節約できるものの、初期コストを回収するまでの時間が長くなりすぎてしまう。
しかしVMOならば初期導入コストも安価。また携帯電話間の料金は地理的に離れていてもゼロ円で済んでしまう。そこでコノエではVMO契約の携帯電話を各事業拠点に置き、営業部員の7割にVMO契約の携帯電話を貸与しただけでなく、他事業拠点や営業部員との連絡が不可欠な内勤者3割に対しても割り当てたという。
コノエの河野榮会長 |
この目論見は見事に成功する。
月額25万円かかっていた固定電話の通信費用はゼロになった。さらに携帯電話の導入数は58台と倍増しているにもかかわらず、月額は28万8000円。従来の携帯電話通信費20万円に対して、わずか8万8000円しか増加していない。利便性が向上した上に、通信費トータルでは大幅減を実現できたのだ。
ここで注目したいのは、コスト削減テーマが固定電話中心の事例でも、導入現場の状況と運用次第ではVMOが通信費用全体のコスト削減に有効であるという点だろう。もちろん固定電話だけであれば、IP電話などの導入を図るほうが目先の利益は大きいかもしれない。しかし営業部員数がある程度以上いるのであれば、携帯電話網を利用した内線機能のほうが総合的な利便性は高くなる。
事業規模が小規模であるが故に、運用を工夫することでVMOを上手に活用できた例といえるだろう。
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