エネファームは何がすごいのか:日曜日の歴史探検
2009年は、エネファームにとっては普及へのステップの年となりそうです。そもそもエネファームが大きく取り上げられるようになったのはなぜなのでしょうか。今月は、エネファームの謎について迫っていきたいと思います。
家庭用燃料電池(Fuel Cell:FC)がにわかに注目を集めています。
日本はポスト京都議定書で2050年に二酸化炭素などの温室効果ガス排出量を2009年度比で60〜80%削減、中期計画となる2020年には2005年度比で15%削減を打ち出していますが、実際のところ、温暖化ガスの総排出量は増加の一途をたどっています。家庭に限ってみても、2007年の二酸化炭素排出量は1990年比でプラス40%を超えており、増加傾向にあることが分かります。
実は、各家庭から出る温室効果ガス削減率は25%と最も高く設定されており、実現には省エネ家電や断熱効果などでの対応では達成できないほどハードルが高いものとなっています。そこで期待を集めているのが家庭用燃料電池なのです。
家庭用燃料電池は、統一名称「エネファーム」と呼ばれています。「エネルギー」と「ファーム(農場)」を組み合わせたこの造語は、水素と酸素から電気と熱を作る仕組みとなっています。これまで家庭は、電気・ガス・灯油などのエネルギーを「使う」だけの場所でした。これが、エネファームの登場により、エネルギーを「作る」場所へと変えようとしているのです。水と大地で農作物を作るのと同様に、必要な場所で必要なだけのエネルギーを作るという分散型エネルギーの発想が注目を集めているのです。
エネファームでは、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、灯油を燃料にオンサイト(使用場所)発電を行う熱電併給機器(コージェネレーション)です。一般的には、天然ガスの主成分(メタン)から効率よく水素を取り出し、空気中の酸素と化学反応させることで電気を生み出す燃料電池方式を採用しています。皆さんも学校で水の電気分解を学ばれたかと思いますが、エネファームの仕組みはその逆の原理を利用しています。つまり、
2H2+O2→2H2O+電気・熱
という化学反応を利用しているわけです。化学反応の際発生する熱は、排熱回収装置で回収し、お湯として貯湯タンクに貯め、必要なときにお湯を供給します。従来の火力発電のシステムでは無駄になっていた熱を給湯や暖房に活用することで、高いエネルギー利用効率を実現しているのです。
では、エネファームは従来の方式と比べてどの程度のエネルギー利用効率なのでしょうか。エネファームの一次エネルギー利用効率は、電気として35%、熱として45%と約80%が利用できますが、これは火力発電所の電気を利用していた従来の方式と比べると約2倍の効率となっています。また、発電時には二酸化炭素などの温室効果ガスを大きく削減できるのも特徴の1つです。燃料から水素を取り出す「改質」の際に二酸化炭素が多少発生しますが、エネファーム1台で削減できる二酸化炭素は年間に約1.3トン。これは、2800平方メートルもの森が1年間に吸収する量に相当します。さらに、使う場所でエネルギーを作り出すので、従来の方式と比べて配電時のロスも抑えることができます。
日本における家庭用燃料電池は、4年間の大規模実証事業を踏まえ、2009年から実用化へのフェーズに舵を切りはじめたところです。ベンダーとしては、パナソニック、ENEOSセルティック、東芝燃料電池システムが商品の発売に踏み切っており、そこに新日本石油、東京ガスといった燃料企業や、積水ハウス、ミサワホームといったハウスメーカーなども加わり、ここ3年ほどが正念場となるとみられています。
世界の共通課題である「地球温暖化」の抑制には、低炭素社会の実現が欠かせません。9月は、低炭素社会の実現に向けて今最も熱い視線が注がれているエネルギーシステム「エネファーム」について、技術動向と各社の戦略についてお届けしていきたいと思います。
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