マーケティング連合軍を形成せよ:エコシステム・マーケティングの威力(2/2 ページ)
企業と消費者の直接的なつながりに着目し、他企業と手を組むことで強みを発揮するエコシステム・マーケティング。この革新的なマーケティングを実現する2つの戦略を、日本コカ・コーラの取り組みを例に紹介する。
パートナーシップ・エコシステム戦略
1社が単独でできることには限りがあるが、インターネット化が進んだ今では、さまざまなパートナー企業と簡単に連係できるようになった。企業同士が結合してイノベーションを追求するのがパートナー・エコシステム戦略である。1対1の連携にとどまらず、幾つもの企業とパートナーシップを作ることが有効になる。
日本コカ・コーラが2008年にキャンペーンとして展開した北京オリンピック応援パークでのパートナーシップが好例だ。同社はコカ・コーラ パークを核として、フジテレビジョンの「お台場冒険王(イベント)」や「すぽると!(スポーツ番組)」、ディー・エヌ・エーの携帯電話向けSNS「モバゲータウン」、マイクロソフトのポータルサイトの「MSN」、ヤフーの「Yahoo!モバイル」などと網の目のような連係企画を展開し、独自のエコシステムを形成した。
その上、「オリンピック番組と一緒に見るサイト」というコンセプトを設定して、オリンピック関係の活動や情報を集約させるとともに、スポンサー関係にある水泳の北島康介選手など自社が保有する経営資源も活用した。アクセスポイントの増強だけでなく、自社やパートナーが持つコンテンツの力までを注ぎ込んだのである。
この例は、企業ごとに異なる強みを戦略的に重ね合わせることで、互いのトラフィックを増やす「Win-Win」のパートナーシップを目指したといえよう。これは、広告枠を購入するという従来のやり方では実現できないことであり、エコシステム・マーケティングがこれまでの企業間連携と異なる点の1つである。
最終回では、エコシステム・マーケティングを実践するポイントと将来の展望について議論したい。
著者紹介:本荘修二(ほんじょう しゅうじ)
本荘事務所代表として、新事業やIT関係、マーケティングを中心に経営コンサルティングを手掛け、企業のアドバイザーや社外役員を務める。多摩大学大学院(MBA)客員教授。日本コカ・コーラの江端浩人氏との共著「コカ・コーラ パークが挑戦する エコシステム・マーケティング」のほか、「大企業のウェブはなぜつまらないのか」など著書多数。東京大学工学部卒業、ペンシルベニア大学MBA、早稲田大学博士(学術・国際経営)。
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