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» 2001年06月23日 12時00分 公開

第7章 分析システム 〜システムを効率化する顧客セグメンテーション〜eCRM実現のためのメソドロジー入門(7)(1/2 ページ)

[松尾順,@IT]

[1]各下位システムを効果的・効率的に機能させる分析システム

 前章まで、「マーケティング・システム」から始まり、「セールス・システム」「エクスペリエンス・システム」を経て「サービス・システム」に至る仕組みを通じて、「非顧客」(ノン・ユーザー)を「優良顧客」(ロイヤルユーザー)に変換するプロセスをご説明してきました。これは、CRMシステム構築に当たっての指針となる基本的な考え方です。全体像は第2章の図3で示してありますので、再確認してみてください。

各下位システムの前に必ず登場する分析システム

図1 分析システムを加えたCRMシステム全体図 図1 分析システムを加えたCRMシステム全体図

 さて、本章で取り上げる「分析システム」は、見た目が複雑になってしまうという理由から、第2章図3には入れていませんでした。なぜなら、分析システムもCRMシステムを構成する下位システムの1つですが、マーケティング・システム、セールス・システム、エクスペリエンス・システム、サービス・システムのすべての段階にかかわってくるものだからです。あえて、分析システムを入れたCRMシステムの全体図を作成すると、次のようになります(図1)。

 それぞれの下位システムの前に必ず分析システムが登場していることがお分かりですね。ノン・ユーザー(非顧客)は、マーケティング・システムに投入される前に、まず分析システムに投入されます。マーケティング・システムで創造された“見込み客”も同様です。見込み客をセールス・システムに投入する前に、分析システムを通さなければなりません。セールス・システムで生み出された“顧客”も、やはり分析システムを通した後にエクスペリエンス・システムへと誘導されます。

 これだけ登場頻度が高いということは、すなわち、分析システムはCRMシステムの中でも極めて重要な 機能を果たしていることを意味します。では、分析システムの機能は何でしょうか。分析システムだけを取り出したホッパー図を示します(図2)。

図2 分析システムのホッパー図 図2 分析システムのホッパー図

 インプットは、各下位システムで名称が異なりますので、ここでは、総称としての“顧客”(非顧客も含む)としてあります。この顧客は、分析システムを通過することで“グルーピングされた顧客”となります。つまり、分析システムの機能は“グルーピング”することです。グルーピングするというのはどういうことかというと、顧客をある基準に基づいて分類する、言い換えると、より分けるということです。「ふるいにかけること」だと考えてもいいでしょう。また、“顧客セグメンテーション”を行うことと同義です。

顧客グルーピングで無駄遣いを回避

 具体例を挙げましょう。ある自動車メーカーが、1台1000万円の高級セダンを発売するために、非顧客を見込み客に変換するマーケティング・システムを設計するとします。この場合、収入上の制約から買いたくても買えない、私のような人間にダイレクトメールを送るのはマーケティング予算の無駄遣いです。なぜなら、見込み客になる確率が極めて低いからです。

 そこで、なんらかの手段で非顧客の購入見込み度を判断できるデータ(例えば、高級車の場合、「収入」は最も重要なデータでしょう)を集め、分析システムにかけることによって、高級セダンを購入する見込みの高い顧客グループとそうでない顧客グループにより分けます。そして、購入見込みの高い顧客に絞ってマーケティング施策を行えば、同じマーケティングコストでより多くの見込み客を創造できます。

レコメンデーション実行時にも必要

 また、高級セダンの特徴を知らせるためのコミュニケーション・メッセージにおいて、それぞれの顧客がピンとくる訴求ポイント(コミュニケーションのツボ)を決定する場合にも分析システムが必要です。

 ある顧客にとって、高級セダンを購入する場合に最も重要なポイントは「外見の豪華さ」ですが、別の顧客にとっては、「内装の高級感」かもしれません。分析システムを通じて、それぞれの顧客が重視する自動車の特徴ごとに顧客をグルーピングし、それに合わせてコミュニケーション・メッセージをカスタマイズすることで、顧客の購買意欲をより強く刺激し、効果的に見込み客を創造することが可能となるのです。これは、ワン・ツー・ワンマーケティングの実践例の1つであり、顧客の過去の購買履歴や趣味し好の分析に基づいた商品のお薦めを行う、いわゆるレコメンデーションを行う場合にも基本的には同じプロセスを踏みます。

 上記の具体例でお分かりになると思いますが、分析システムとは、ほかの下位システム、すなわちマーケティング・システム、セールス・システム、エクスペリエンス・システム、サービス・システムをより効果的に機能させる、また、より効率的に機能させる役割を持っています。従って、分析システムとは、ほかの4つの下位システムを支援する位置付けにあるといえるでしょう。

まつおっち先生の“ココがポイント”

分析システムとは、顧客を“分析”し、グループ化を行うことで、eCRMを実現する各下位システムを効果的・効率的に機能させる支援システムである


では、実際に分析システムを実践する上で

どのような心がけと仕組みが必要でしょうか?

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