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» 2003年05月21日 12時00分 公開

Business Computing書評(5):正しいIT投資を目指すための5冊

[岩崎史絵,@IT]

この5冊

  • 大丈夫か あなたの会社のIT投資
  • 戦略的IT投資マネジメント
  • 図解/ITベースの事業撤退・投資マネジメント
  • TCO IT投資のプランニングと戦略的マネジメント
  • IT不良資産

 IT投資に厳しい目が向けられている。長引く不況によりIT投資を抑制する企業も多く、新規のITシステム構築時ばかりではなく、既存システムに対してもコスト削減の目が向けられるようになってきた。経営者サイドからのROI(投資利益率)を明らかにするよう求める声は次第に大きくなってきているものの、その実践となるとまだまだこれからという企業が多いようだ。ここでは、これからIT投資効果測定に取り組もうという方にオススメの5冊を紹介する。

定量評価のための実践ノウハウ

大丈夫か あなたの会社のIT投資

大和田崇・大槻繁著
NTT出版
2002年2月
ISBN4-7571-2078-8
1900円+税

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 戦略的なIT投資を実行するには、システム開発に掛かる費用だけでなく、その効果や適用技術の将来性・信頼性を定量的に測り、妥当性を評価しなくてはならない。だがシステム・コストそのものの算出が難しいうえ、その効果や将来性を客観的に把握するのは至難の業だ。本書はこうした悩みを抱える企業の経営企画室やマネジメント層に向け、「IT投資を定量的に評価するための実践ノウハウ」を紹介している。著者らが所属するコンサルティング会社ストック・リサーチのノウハウをベースとし、分かりにくいシステム・コストの算出法や評価手法について徹底的に解説。ベンダが提示する開発費用見積もりの妥当性や、選定ポイントについても言及している。また「ITは決して万能のツールではない」という観点から、ITへの過剰な期待も打ち砕く。IT化の推進計画やシステム導入を考えている企業は、プロジェクトに着手する前に一読することをお勧めしたい。

歴史的経緯で知る評価手法

戦略的IT投資マネジメント 情報システム投資の経済性評価

松島桂樹著
白桃書房
1999年10月
ISBN4-561-23321-0
2200円+税

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 「IT投資の評価手法」について、経済学の観点から考察している1冊。情報システムと経済性評価の関係について、その意義・歴史・今後の方向性を3部構成で解説している。第I部は「経済性評価の基礎概念」とし、キャッシュフローベースの評価原理と、ITとの関係を論述。続く第II部「情報システムの発展と経済性評価」では、経営情報システム(MIS)、意思決定支援システム(DSS)、コンピュータ統合生産システム(CIM)、戦略的情報システム(SIS)、企業変革の情報システム(BPR)という5つのシステムにおいて、その意義・目的・歴史について解説。最終章である第III部「経済性評価の諸問題」では、従来の「投資−効果」という単純な評価手法から脱し、「経営者・ユーザー・システム部門の3者間で評価のための合意形成モデルを組み立て、これを評価に適用する」という新たなフレームワークを打ち出している。

 本書は「岐阜経済大学出版助成図書」のため、ビジネス書籍というより学術書に近く、一般ビジネスマンにはややなじみにくい感があるかもしれない。ただし学術分野としての「IT投資の評価手法」がどのようなものか、どこまで研究されているのかを体系的に学ぶのには最適の良書。

図解で分かる入門書

図解/ITベースの事業撤退・投資マネジメント

久住正一郎著
中央経済社
2002年1月
ISBN4-502-57640-9
2800円+税

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 「企業の投資戦略」と「IT活用」の2点について8章構成で解説している入門書。今日の企業経営において、戦略投資すべき分野とITの役割、その効果について図説している。第1章「ITベースの事業投資へ」と第2章「投資の裏には撤退がある」では投資と撤退戦略について、第3・第4章「ITベースの分野別投資案件のポイント1・2」では経営戦略システム、サプライチェーン・マネジメント、顧客管理システムなどについて、その投資戦略の意義と効果を図解、第5章「スピード経営下の戦略投資」では現在の日本企業が置かれている経済状況からIT投資の重要性を力説。ここまでが「入門編」として、SCMやCRM、データマイニングなどITキーワードとともに「投資戦略」について理解を深められるようになっている。

 続く第6章「持たざる経営の戦略投資」から第7章「投資計画と投資リターン算出法」、第8章「投資プロジェクトのリスク分析」では、投資計画の立て方からプロジェクトの価値測定について解説。「現在価値法」「DCF(Discounted Cash Flow)法」「インクレメンタルDCF法」などさまざまな価値算出方法を挙げ、IT投資計画とその後の評価測定についての実践例を示している。豊富な図表で、ややこしい計算や数値の見方を分かりやすく解説しているのが特徴。中堅企業の経営企画室やマネジメント層向け。

コスト削減手法を解説

TCO IT投資のプランニングと戦略的マネジメント

森田進+ストラテジック・リサーチ著
ピアソン・エデュケーション
(旧プレンティスホール出版)
1999年4月
ISBN4-89471-108-7
2400円+税

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 TCO(Total Cost of Ownership)削減のためのITソリューションを提示した1冊。情報システムにかかわるコストを「直接経費(初期導入費用、ハード/ソフト費、運用コスト、通信費、人件費など)」と「間接経費(サポート、ヘルプデスク・コスト、教育費)」に分け、この2つのコスト削減について、ITツールがどのようなソリューションをもたらすかを解説している。またTCO削減のためのシステム・アーキテクチャや通信方法、代表的なシステム運用管理ツールなどについて詳しく紹介しており、TCO削減に悩む情報システム部門やアウトソーサへの一助となっている。

 ちなみに本書は1999年に出版されたため、後半は「2000年問題」への対処法やシステム移行がテーマとなっている。もちろん現在システムのリプレースを予定している企業にとっても一読の価値あり。巻末索引付き。

あなたの会社は“ゆでガエル”?

IT不良資産 12のチェックポイントで見るシステム投資の実態とその解決法

森秀明著
ダイヤモンド社
2003年4月
ISBN4-478-37432-5
2000円+税

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 日本のIT資本ストックの約30%、IT費用の約50%、合わせて約7兆円が不要化している──。これが本書の掲げる数字である。日本企業で現在も行われている無駄なIT投資を、ITガバナンスの面から解き明かし、そのチェックポイントとそれに基づいて企業がどのセグメントに属するかを示し、さらにそのセグメントからいかに進化するかの対策を解説する。IT戦略活用の度合いに応じて分類された各セグメントに属する企業は、戦略系コンサルティング会社らしく「ゆでガエル企業」「笛吹けど踊らず企業」などとネーミングされ、具体的な社名をあげて例示、その実態を解説している。毎年、多額のIT投資をしているはずだが、その費用全体や効果がいまひとつはっきりしないと考えている企業の方々にお薦めしたい。

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