SAP製品に関する3つの疑問を解くトレンド解説(8)(2/3 ページ)

» 2004年06月18日 12時00分 公開
[アットマーク・アイティ編集局,@IT]

SAP製品は導入の手間が掛かるのか?

 俗に「パッケージ製品は、8割はフィットするが、残り2割はどうしても既存業務と合わない」といわれる。その2割部分の“ギャップ”を埋めるために、導入プロジェクト全体の工数やコストの大半が費やされてしまう。また、機能追加・変更の大きなカスタマイズでは、アップグレード保証外となり、本体アップグレードをするとカスタマイズ部分をまた一から作り直すことになる。玉木氏は「導入・アップグレード時のこうした“痛み”を緩和するために、mySAP ERPでは最新技術を搭載し、製品の自由度を上げました」と語る。

 導入企業がカスタマイズを施す個所は、「画面」「帳票」「インターフェイス」の3つに大別できる。従来のR/3では、画面とアプリケーションのロジックが紐付いていたため、画面に表示される項目や画面枚数を大幅に変更すると、アップグレード時の保証外となり、サブシステムのアップグレードごとに画面を開発し直す必要があった。これはユーザー企業にとって大きな負担だ。

 今回のmySAP ERPでは業務ロジックと画面を分離させ、3階層アプリケーションの形態を取ることで、画面の独自性を確立した。さらにクライアントサイドにおける機能性と運用性を向上させるため、「WebDynpro」というUI開発・実行環境を提供している。つまり利用する側も、Webブラウザを経由して、いつでも誰でもSAPシステムにアクセスできるようになったということだ。

 また、帳票部分に関しても大幅に改善されたという。帳票ツールに関しては、従来からSAP認定パートナーの帳票ツールベンダ各社の製品を提供していた。mySAP ERPでは従来の方法に加え、Adobe PDFに完全対応となり、帳票画面から印刷まで一手にPDFを利用できるようになった。すなわちPDF作成ツールで帳票を設計し、それをそのまま画面に提示することで、「あたかも帳票に数値を記入するイメージで使えば、そのままXMLを介してSAPシステムにデータが入力されます。これにより、エンドユーザーの使い勝手はもちろん、帳票カスタマイズの手間も大幅に削減できます」(玉木氏)という。

 そしてもう1つがインターフェイスの問題だ。もともとR/3はOS、データベース、ハードウェアの制約を受けないオープンなシステムとして登場したが、アプリケーションそのものはSAP社の独自言語ABAPを使って開発されており、ほかのシステムと連携する際には個別にリモート・ファンクション・コール(RFC)を経由する必要があった。しかし新製品ではHTTP、XML、SOAPといったオープンな連携技術にネイティブ対応し、NetWeaver XI(システム連携を実現する基盤で、EAIに相当する)で複数のシステムを束ねて連携させることで、インテグレーションの開発工数と運用負荷を大幅に軽減する。これにより、日々の運用はもちろん、アップグレード時にインターフェイス部分を1つ1つ開発し直す手間も省ける。もちろんRFC経由でのシステム連携も可能だが、XMLやSOAPを使ったシステム連携も実現できるというわけだ。また機能面でいうと、RFIDへの対応など新機能が追加されたことで、実現できるソリューションの幅も広がっている。

 ちなみにインターフェイス部の改善といえば、前述したWeb画面へのネイティブ対応もポイントの1つ。従来はWeb対応を実現するため、マイクロソフト社のIISサーバなどを経由させていたが、mySAP ERPではWebへのネイティブ対応を実現することで、使い勝手をより向上させたという。また、これを応用してモバイル環境からのアクセシビリティも改善された。こうして時間や場所を問わずシステムを利用できるようになったことで、「使いこなす=より高い効果を期待できる」ようになったといのことだ。

 「スタンダードパッケージを使う利点は、こうした最新の技術に対応し、ITの効果をさらに向上させることにあります。ところがいままでは導入時とアップグレード時の“2割のギャップ部分”の負荷が大きく、アップグレードに二の足を踏むお客さまもいました。この負荷を緩和することで、アップグレード率を大幅に向上させ、快適で便利なソリューションを提供したいと思います」(玉木氏)。では次に、アップグレードにはコストがいくら掛かるのか、保守サービスはどのようになっているかを見ていこう。

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