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» 2004年07月22日 12時00分 公開

情報マネージャのためのナレッジマネジメント実践講座(5):スピード戦略を実現するナレッジマネジメント──マーケティングと融合する情報化戦略としてのKM(その2) (1/2)

スピード戦略に基づく、営業/マーケティング強化のためのナレッジマネジメントの実践には、“フローのナレッジ”の活用が欠かせない。それはどのようなものか?

[加治 達也,@IT]

 これまでの連載においては、ナレッジマネジメントに関する今日的な解釈とともに、ナレッジマネジメントに応用できる定番のマネジメント手法をご紹介した。特に前回は、マーケティングの上流工程を中心テーマとして、競争優位に焦点を当てたことを思い出していただきたい。実はここに、営業現場が求めているナレッジと、ナレッジマネジメントの実践意義とが一致するポイントがある。強み(コア・コンピタンス)となるナレッジを競争優位の核として、そこからさまざまなナレッジへの広がりや体系を考えることが重要なのだ。今回は、テーマをさらに具体的な部分へと進めてみたい。

活用すべきナレッジが眠っている場所の特定

 前回(「営業部門との協働で推進するナレッジマネジメント」)、営業部門、マーケティング部門を取り上げたが、業種/業態によって、利益や競争優位の源泉となるナレッジの存在場所は異なる。その場所の特定においては、「パレートの法則」を応用してみるのも面白いかもしれない。

 例えば、「A企業の利益の8割は、A企業の2割の従業員数しかいないB事業部門のナレッジによって創出されている」など、利益の源泉となるナレッジに関する仮説を立て、検証してみることによっても新たな発見があるだろう。その結果、「本当に価値があるものはわずかしかない」という考えにたどり着けば、ナレッジの蓄積においても、量より質という考えに自然にシフトしていくはずだ。

「暗黙知と形式知」以外の分類軸としての「ストックとフロー」

 さて、今回も前回に引き続き、昨今の潮流となっている営業力強化にフォーカスを当て、ナレッジマネジメントの具体論を進める。

 ナレッジの性質を説明する分類として、「暗黙知形式知」がある。難しい表現を使わなければ、暗黙知とは個人の頭の中にある隠された知識であり、形式知とは人間の外部に何らかの形で表現されている知識だ。この分類による活用方法やKM実践手法については、これまで書籍や雑誌に数多く取り上げられているので今回は割愛する。

 今回は「暗黙知と形式知」以上に、筆者が現実的だと感じている「ストックとフロー」という分類軸を取り上げてみたい。

ストックのナレッジ

 前回まで、議論の中心としてきたナレッジの多くは、ストックのナレッジである。

 ストックのナレッジとは、時間経過の影響を受けにくく安定した価値を保有しており、その高い質を作り上げるまでに、十分な熟成期間が必要である。ストックのナレッジには、理論的なものや知識レベルの高いもの、経験によってさまざまな検証を経て結論付けられたものなど、ビジネスにおいて利用価値が高いものが多い。利用形態もさまざまで、ビジネスの方向性を指し示すものや、新たな気付き(ひらめき、ヒント、納得など)を与えるものまである。バランスシート(貸借対照表)には表れてこないが、資産的価値が高い無形資産である。

 前回同様、営業部門を主体として考えると、例えばストックのナレッジとは、次のようなものとなる。

  • ミッションステートメント/ブランドステートメント
  • 各戦略に関するナレッジ
  • 勝率の高い企画提案に関するナレッジや、ケイパビリティに関するナレッジ
  • 成功事例/失敗事例など……

 そのほかにも、市場や顧客、競合企業を定点観測したナレッジも含まれる。

フローのナレッジ

 一方、フローのナレッジとは、“陳腐化が進みやすいが、その時点においては価値があるナレッジ”である。情報収集された瞬間から陳腐化が始まり、時間による質の低下は避けられないが、しかし利用価値は高いという性質を持つものだ。

営業部門においては、

SFAのようなシステムに格納されている日常的に生成される断片的な最新情報(業務の進ちょくやコンディション、利益に関する情報、顧客や競合に関するタイムリーな洞察や分析など)がそれに該当し、インターネットや新聞などの外部メディアに掲載された最新情報も含まれる。

 つまり、時間の流れとともに、別の情報やナレッジに取って代わられてしまう。「タイムリーに活用できなければ利用価値が低いナレッジ」といえ、別のいい方をすれば、「時間の流れの中にあるナレッジ」ともいえるだろう。

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