イスラエル出身の物理学者エリヤフ・ゴールドラット博士(Dr. Eliyahu M. Goldratt)が提唱した生産管理・改善のための理論体系。SCMの背景理論の1つともいわれる。
基本的なコンセプトは、「生産工程の中にはボトルネックとなる工程があり、それが全体のスループット(生産量)を決定する。最適生産のためには工程全体のスケジュールをボトルネック工程の能力に合わせる必要があり、生産性向上のためにはボトルネック工程を重点的に改善すべきだ」というものである。“制約条件の理論”という名は生産スケジューリングの理論として、「ボトルネック工程がラインの全体スケジュールの制約条件となる」と考えたことに由来する。
TOCは、1970年代後半に生産スケジューリングのことを相談されたことをきっかけにゴールドラットが開発した生産スケジューリングソフトウェア、OPT(Optimized Production Technology)に由来する。当初、このソフトはブラックボックスであったが、1984年にその内容を紹介する小説『The Goal』を出版したところ、ベストセラーとなり、OPTなしで大幅な生産性向上を実現する企業が見られるようになった。そこでゴールドラットはOPTの販売から離れ、その背景理論にTOCという名を付け、経営コンサルティングに従事するようになった。
ゴールドラットはその後、「改善の5ステップ」「思考プロセス」「スループット会計」「クリティカルチェーン プロジェクト管理」などの方法論を提唱し、TOCは単なる生産スケジューリング理論から企業全体の収益最大化のための経営革新手法へと発展している。
▼『ザ・ゴール——企業の究極の目的とは何か』 エリヤフ・ゴールドラット=著/三本木亮=訳/ダイヤモンド社/2001年5月(『The Goal: 2nd revised edition』の邦訳)
▼『ザ・ゴール2——思考プロセス』 エリヤフ・ゴールドラット=著/三本木亮=訳/ダイヤモンド社/2002年2月(『It's not Luck』の邦訳)
▼『チェンジ・ザ・ルール!——なぜ、出せるはずの利益が出ないのか』 エリヤフ・ゴールドラット=著/三本木亮=訳/ダイヤモンド社/2002年10月(『Necessary but Not Sufficient: A Theory of Constraints』の邦訳)
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