『IT投資効果をどのように測るのか?』という企業の関心は非常に高い。そのようなニーズに応えるため、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は、IT投資効果を測定するための共通的な指標の策定を進めている。
IT投資の効果をどのように測るのか。企業が、IT投資を測定するための共通的な指標を策定できないだろうか。そうした発想の下、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は、ITコストマネジメント研究プロジェクト報告書「先進諸国との対比におけるIT投資/ITコストダウンとITコストマネジメント」をまとめた。
JUASの研究プロジェクトで浮かび上がってきたITのコストダウン項目は図1のとおりである。図1に整理された項目を企業が実際に実施していくためには、自社のIT投資とその効果について把握しておくことが前提となる。そこで、JUASの研究プロジェクトでは、企業のIT投資把握の実態と、IT投資をきちんと把握するための手法・評価モデルも作成している。ここでは、JUASのIT投資に関する研究成果と今後の取り組みを中心に紹介する。
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図1 情報システム・コストダウン対策項目 出所:社団法人日本情報システム・ユーザー協会 |
まず、IT投資測定に対する関心は、企業のITに関する関心事項の中でどれほどの位置にあるのか。トップは、「システムの再構築・新システム構築」で、以下「ITコストの削減」「セキュリティ」に続き、「IT投資評価」は第4位だ。IT投資効果を評価したいという企業の気持ちは強い。
では、どのくらいの企業がIT投資効果を測定しているのだろうか。それは、企業規模によって異なる。JUASでは、IT投資の「事前評価」と「事後評価」を調査しているが、「事後評価」について見ると、「実施している」企業は、売上高が1000億〜1兆円の企業で12%、1兆円以上の企業で25%である。「一部実施している」企業も含めた場合、1兆円以上の企業は71%が事後評価を行っているのだが、残りの約30%は何もしていないという結果が表れている。企業規模が小さくなるにつれ、「実施していない企業」の比率は高まる。100億円〜1000億円という中堅クラスの企業では、約58%が事後評価をしていない。IT投資の効果を測りたいが、実施できていないという企業の姿が浮かび上がってくる。
では、なぜ、IT投資の評価が行われないのだろうか。JUASは、その原因を探るためのアンケート調査を行っている。「評価する必要がない」という回答は少なく、多くの企業がIT投資評価の必要性を感じているのである。対して、「事後評価には案件に深くかかわったメンバーの協力が必要であり、特に悪い状況をまとめるには抵抗がある」という項目には多くの企業が「非常にそう思う」と答えている。
企業において、実際にIT投資の評価を行う役割を担うのは多くがIT部門である。自分で実行したプロジェクトを自分で評価することは、難しいという実態が見えてくる。
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