経験曲線(けいけんきょくせん)情報マネジメント用語辞典

experience curve / 経験曲線効果 / 経験効果 / エクスペリエンスカーブ

» 2005年02月22日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 多くの業界で見られる“同一製品の累積生産量が増えるに従って、単位当たりの総コストが一定の割合で低下していく”というパターンを示す曲線。この効果を「経験曲線効果」「経験効果」という。一般に、累積生産量が倍増するごとに、単位コストが20〜30%ずつ逓減するとされるが、その率(習熟率)は、業界や製品によって異なる。

 横軸に累積生産量を、縦軸に単位コストをとったグラフで表され、通常の線形軸にプロットすると下向きにカーブした右下がりの曲線となり、対数軸にプロットすれば右下がりの直線で示される。過去の統計値をマップすることにより、将来コストを予測することができる。

 このパターンは、1960年代に米国の戦略コンサルティング会社、ボストン コンサルティング グループ(BCG)によって多くの産業で見られる普遍的な現象として発見された。同社は当初、これを学習曲線(効果)で説明しようとしたが、それでは説明困難な事象があったため、“同じ製品を生産する経験の蓄積が総コストの差を生む”と解釈し、新たなコンセプトとして1966年に発表した。

 経験曲線は理論モデルではなく、多様な産業の観測と実データから導き出された傾向で、そのメカニズムは明確ではない。提唱者であるBCGのブルース・D・ヘンダーソン(Bruce D. Henderson)は経験曲線の要因として、学習、専門化、規模、投資などを挙げ、経験曲線効果はそれらが結合したものとしながら、「経験曲線効果を生む基礎的なメカニズムは、まだ十分に説明されていない」とも述べている。

 このコンセプトに従うと、競争企業に対して累積生産量を2倍にすれば、コスト競争力を維持できることになる。そしてコスト競争力は競争要因として極めて重要であり、かつ経験曲線効果は自然発生的なものではなく企業の努力が必要であることから、BCGは企業は経験曲線効果に投資すべきであると結論付けた。

 すなわち、他社に先駆けて積極的に投資を行って生産量・活動を増加することで、コスト優位性を築いて、市場シェアを増加させたり、高い収益を確保するビジネス戦略である。特に量産効果がある製品では、他社を引き離すためにも早期に市場シェアを確保することが要求される。

 このようにBCGは経験曲線のコンセプトによって、コスト競争力(収益力)と市場シェアの関係性を示したが、これが発展して市場シェアを資金供給能力の代理指標として使用するPPMが生み出された。

参考文献

▼『BCG戦略コンセプト――競争優位の原理』 水越豊=著/ダイヤモンド社/2003年11月

▼『ポートフォリオ戦略――再成長への挑戦』 ジェームス・C・アベグレン、ボストン・コンサルティング・グループ=編著/プレジデント社/1977年4月


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