厳しくなるIT企業の会計監査、あの会社は大丈夫か?トレンド解説(13)(2/2 ページ)

» 2005年05月12日 12時00分 公開
[山口 邦夫@IT]
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IT業界の反応

 ガイドラインに沿った監査は、実質的に2005年3月期から実施される。これによって、2004年9月の中間期と比較した場合の業績に大きな変動が生じる可能性もある。このような流れを先取りして社内基準の厳格化を実施する動きも出てきた。

 情報システム開発大手のTISは、公表済みだった9月中間期の業績について大幅な下方修正を公表。自主的な見直し作業を行った結果、仲介取引の販売代金を売上高から除外し、手数料のみを計上する方式に変更したためだ。さらに、通期の売り上げ見通しについても、従来の2158億円から2070億円に減額修正した。

 日本IBM、電通国際情報サービス(ISID)なども、会計処理の厳格化に向けて社内で徹底する方向へ動きだしている。

 日本IBMでは、2004年12月期の決算に関し、社内基準に反した売り上げ計上が2億6000万ドル(約270億円)含まれていたことを公表。2004年10月の社内通達で、付加価値を加えない他社製品を販売する際、製品価格ではなく販売手数料のみを計上することを義務付けていたが、社内規定違反があったためだ。

 これに伴って、米IBMはすでに発表していた2004年12月期の売上高を965億300万ドルから922億9300万ドルに減額修正した。ただし、日本IBMは実際に他社製品を調達し、顧客に販売していた。この点、架空の商品の販売を業者間で繰り返し、売上高を水増ししていたメディア・リンクスとは一線を画す。

 また、電通国際情報サービスは「業者間取引に関するガイドライン」という社内通達を策定し、利益率の低い取引の内容を経理部門で確認し、最終利用者の見えないものは契約を見直すこととしている。

 こうした動きは、IT業界の会計処理に対する不透明なイメージを払拭し、信頼を回復するためのアクションを起こしたものと評価できるだろう。

 エンロン、ワールドコム事件で手痛いダメージを受けた米国は、会計基準の厳格化などの再発防止策を打った。これに対して、日本の対応が遅れたことは否定できない。上場を目指し、あるいは成長力を社外にアピールするために、IT業界内で売上高至上主義が支配的だった感もある。このような従来型の発想に代わり、利益重視型経営への方向転換を迫られているのである。


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