人間中心設計(にんげんちゅうしんせっけい)情報マネジメント用語辞典

HCD / human-centred design / human-centered design / 人間中心デザイン

» 2005年05月19日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 人間とインタラクション(対話型操作)を行う機械/システムの開発に当たり、使う人間の立場や視点に立って設計を行うこと。ユーザビリティの高い機械/システムを作ることが目的である。

 そうした努力は古くから行われており、人間工学、HCI、ユーザビリティ工学、認知工学などの各分野で研究されてきた。人間中心設計は、これら先行する諸分野で示されていた解決策や方法論を統合する概念として、認知心理学の大家であるドナルド・A・ノーマン(Donald A. Norman)らにより提唱された。

 使用者がより具体的・明示的な場合には、「ユーザー中心設計(UCD)」という言葉も使われる。逆に“誰にとっても使いやすい”ことを目指す意味では、「ユニバーサルデザイン」の概念につながる。

 人間中心設計という考え方が登場した背景には、コンピュータおよびコンピュータ搭載機器の高性能・多機能化、Webサイトの使用目的の多様化があり、「複雑なものをより簡単に使いたい」というニーズが高まりがある。人間中心設計のプロセスを定めた「ISO 13407」が登場すると、このコンセプトはソフトウェア開発やWeb政策など、各方面から注目を集めるようになった。

 「ISO 13407:1999 Human-centred design processes for interactive systems」※は、英国ラフボロー工科大学のブライアン・シャッケル(Brian Shackel)を中心とするグループが長年行ってきた人間工学系の研究を基本として、1995年にISOに提案され、1999年に国際規格化された。


※日本の翻訳規格は「JIS Z 8530:2000 人間工学?インタラクティブシステムの人間中心設計プロセス」


 ISO 13407では、まず人間中心設計の必要性の特定を求めている。次に4つのステップを一連のプロセスとして回していく。

  • 使用状況の理解と明示
  • ユーザーと組織の要求事項の明示
  • 設計による解決策の作成
  • 要求事項に基づく設計の評価

 これは使用状況(コンテキスト・オブ・ユース)の情報を、ユーザーと設計者で循環・共有することにより、ユーザーの目的や特性に合った機械/システムがデザインできるという考えに基づく。さらにISO 13407ではユーザビリティテストを行う施設の整備、そのための部署や人員の配置、教育の実施なども求めている。

 また、周辺文書の1つ「ISO/TR 16982:2002 Usability methods supporting human-centred design(人間とシステムのインタラクション?人間中心設計のためのユーザビリティ評価手法)」では、12種類のユーザビリティ評価手法が紹介されている。

■ユーザーテスティング ■インスペクション
ユーザー観察 ドキュメントベース・メソッド
パフォーマンス評価 モデルベース・メソッド
クリティカルインシデント法 専門家評価
質問紙法 自動評価
インタビュー
シンクアラウド法
協同的設計・評価
クリエイティビティ・メソッド
ISO/TR 16982で取り上げられているユーザビリティ評価手法

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