e-文書法(いーぶんしょほう)情報マネジメント用語辞典

電子文書法

» 2005年06月16日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 税法や商法、労働法などの各種法令により、民間企業が作成・保存することを義務付けられている文書・帳票類の電磁化(電子的・磁気的)を、一部の例外を除いて一括して認める法律の通称。通則法と整備法の2つの法律から構成され、2004年11月19日に成立し、2005年4月1日に施行された。

 民間に文書の保存を義務付けている法律は多岐にわたり、電子帳簿保存法のように電子データを認めるもの、紙媒体での保存でなければならないものなど個別の法律によって要件や内容が異なっていた。e-文書法はこれらを1つ1つ改正するのではなく一括して電子保存を認めるもので、251の法律が実質的に改正された。

 対象になるのは、取引先から受領した契約書や見積書、注文書、請求書といった財務・税務関係書類、カルテや処方せんなどの医療関係書類、定款や株主総会・取締役会の議事録の会社関係書類など。ただし、損益計算書や貸借対照表、高額の領収書、船舶や車両の安全手引書類、運転免許証など約50の法令にかかわる文書は除外されている。

 e-文書法の新しい点としては、初めから電子文書として作成された文書(電子文書)の保存だけでなく、紙で作成された書類をスキャナで読み込んだイメージファイルなど(電子化文書)も一定の技術要件を満たせば原本と見なすことを認めたことがある。

 e-文書法のうちの1つ、通則法の正式名称は「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」といい、文書保存を義務付けている各法律に対して原則としてすべて電子保存を認める通則を示し、その目的や言葉の定義、条件などの共通事項を定めている。

 一方の整備法は正式名称を「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」といい、通則法のみでは不足する規定整備を行うもので、個別の法律の部分改正を具体的に規定している。

 電子データの作成・保存における課題として「見読性」「完全性」「機密性」「検索性」などの確保が挙げられるが、e-文書法が対象とする文書にはさまざまなものが含まれ、それぞれ内容・性格が異なるため、見読性や完全性などを確保するための要件は必ずしも共通しない。

内容 技術要件/対応手段
見読性 作成・保存した文書を表示・印刷でき、内容が確認できる イメージ解像度・階調、文字コード、ファイル形式
完全性 文書の作成者・作成時期、紙文書などと電子化した文書が同一であることが確認できる(真正性)
保存義務期間中に文書が改ざん・消去されないこと、改ざんされたことが確認できる(真正性)
電子署名タイムスタンプ
保存義務期間中に文書が消失、破損しない(保存性) 記録媒体、アーカイブ、ILM
機密性 文書の盗難、漏えい、盗み見などが防止できる アクセス制御、暗号化、データ消去・廃棄
検索性 必要に応じて求める文書を探し出せる DMSCMSOCR

 そのため電子保存の具体的な方法や要件については、e-文書法では規定せず、文書内容の重要性や消失・改ざん・漏えいなどが発生した場合の影響の大きさなどによって、各省庁が省令によって定めている。

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