ERD(いーあーるでぃー)情報マネジメント用語辞典

entity-relationship diagram / ER図 / ERダイアグラム / 実体関係図 / エンティティ-リレーションシップ・ダイアグラム

» 2005年07月28日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 ERモデルを描き表すための表記法、あるいはその表記法によって記述された図のこと。狭義には提唱者のピーター・チェン(Peter P. Chen)によるオリジナルの表記法のことをいい、広義にはそれを基に拡張・発展した各種の表記法をいう。

 ERDにはさまざなバリエーションがあるが、基本はERモデルの基本要素である実体(エンティティ)を示す記号をその関連(リレーションシップ)を示す線で連結した図として表現される。オリジナル表記法は、ERモデルとともに1970年代にチェンによって提案されたものだが、現在ではあまり使われることはない(情報処理試験に出題されることはある)。

チェンERDの例 チェンERDの例

 今日、最も普及しているのがIE(information engineering)表記法とIDEF1Xである。IE表記法は、データ中心アプローチ(DOA)に基づく開発方法論であるインフォメーションエンジニアリング方法論(IEM)における表記法として提唱された手法で、俗に「鳥の足」とも呼ばれる。IDEF1Xは米国標準技術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)でFIPS 184として規格化されたもので、リレーショナル・データベース(RDB)への実装を重視した手法である。これらは多くのERモデリング/データベース設計ツールでサポートされている。

IE表記法の例 IE表記法の例

 このほか、日本においてはT字形ER(佐藤正美氏)、THモデル(椿正明氏、穂鷹良介)、渡辺式(渡辺幸三氏)などが知られている(厳密にはTHモデルはERモデルではないとされる)。

 ERモデルは本来、実装から独立した概念(意味論)レベルでモデリングを行うことを目指したもので、ERDは概念データモデルを描くためのツールである。しかし、エンティティをそのままRDBのテーブルに当てはめると論理データモデルを概観するのに便利であるため、論理データモデル設計、さらには物理データモデル設計にも流用されることになった。これによって物理モデルから論理モデルを導き出すリバースエンジニアリング的な使い方をされるに至るが、「そもそも誤用である」「本来の業務分析がおざなりされた」といった批判もある。

 ERモデリングツールとしては「AllFusion ERwin Data Modeler」が有名である。

参考文献

▼『ERモデルによるデータベース設計技法――モデルベース開発のための必修技術〈改訂〉』 林衛=著/ソフト・リサーチ・センター/2005年3月

▼『インフォメーション・エンジニアリング原論――その実践の原理/原則』 James Martin & Co.,Inc.=著/ジェームスマーチン・アンド・カンパニー・ジャパン(株)=訳/トッパン/1994年6月(『An introduction to the information engineering methodology』の邦訳)

▼『情報資源管理の技法――ERモデルによるデータベース設計』 酒井博敬=著/オーム社/1987年7月


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