2005年10月25日(火)、「第1回 問題発見力勉強会」(@IT情報マネジメント/ソフトバンク クリエイティブ共催)が東京・赤坂のソフトバンク クリエイティブ本社 セミナールームで行われた。マネジメント力のフレームワークとコミュニケーションスキルから質問話法まで、その内容をお伝えする。
株式会社リアルナレッジ
代表取締役
秋池 治
横浜国立大学卒。メーカー系情報システム会社にてシステム企画とシステム開発に従事。その後、ユーザー系企業でデジタルビジネスの企画および社内改革に取り組む。2003年に数名の仲間とともに株式会社リアルナレッジを設立、業務プロセスの可視化やプロセスの最適化により、経験や勘に依存せず業務を遂行するためのパフォーマンスサポートを提供している。著書に『情報エキスパート』(アプライドナレッジ刊)がある。
さて、なぜいま「問題発見力」が重要なのでしょうか。従来のマネジメントというのは、例えば営業であればみんなが同じ行動をする中で、それを管理すること──すなわち「マネジメント=管理」という意味合いで使われてきました。しかし、いまのビジネスは複数の高度な要素で成り立っていますから、マネージャがすべての面でスタッフより優れているとは限りません。つまり、組織は「多様なスペシャリストの集合体」になり、業務は「プロジェクト型(非ルーチン型)」になったことで、新たなマネジメント力が求められているのです。
ITが関連する業務は特にこの傾向が強く、業務がプロジェクト化することで、ルーチンワークが少なくなり、「管理する」マネジメントが利かなくなっています。マネジメントだけ古いスタイルで、現状の組織や業務に合わない。そこで、PMBOKなどを利用するケースが見られるようになってきたわけです。
では、マネージャに必要な力とは何でしょうか。マネージャが、「CPDサイクル」(後述)をきちんと回すのに必要なスキルは次の3つです。
マネジメント力の第一歩は「プランニング力」です。マネージャには計画し、ゴールを正確に伝える、説明責任があります。
2つ目は「チーム力(コーチング)」です。マネージャがすべて自分でやる、という力業が利かない時代です。メンバーの力をいかに引き出すかで決まります。
3つ目は「コンサル力(問題発見力)」です。コーチングでよく「答えは部下の中にある」といいますよね。しかし、有限期間で成果を出すためには部下を待つだけではダメなんですね。コンサルをすることなく、ガリガリと問題解決を図る上司でも、確かに成果は上がります。しかし、それでは部下の育成につながりません。そこで、コンサル力が必要になります。
マネジメントでは、よく「PDCA」を回すといいますよね。ゼロベースで「プランニング(P)」から始めると確かにきれいなんです。しかし、問題発見がなされていなければ、立てるプランは的外れになってしまいます。「こんなにきれいにプランニングしたのに、実行ベースに移したらどこかおかしい」と感じたりするものです。そこで、PDCAではなく「CPD」でサイクルを回すことをお勧めします。
プランニングの前に、まず「レビュー(C)」を始めるのが現実的です。レビューで必要なのが、問題発見力──つまり「ギャップを見つけること」です。昨年度の反省や前回のプロジェクトの反省をせずに始めるのではなく、反省からギャップを見つけるトレーニングをすることが大切です。ギャップがあることは本来嫌なことですが、レビューから始めれば、ギャップの発見は「良いこと」になります。チェック、チェックでギャップを見つけるのがいいのです。新規プロジェクトであっても、類似の仕事を参考にレビューしてください。このCPDサイクルが成果につながります。
仕事は千差万別です。でも、共通で使える原理・原則があります。これが分かると、類推して新しいものに適応できます。How toで育った人は応用が利きにくいですが、フレームワークを頭に入れておけば、最小限のスキルでハンドリングできます。
問題発見力のフレームワークは、「コミュニケーションスキル(ヒアリングスキル)」「構造化スキル」「柔軟な発想力」から成り立っています。ヒアリングスキルは、インプットがあり、理解し、そこから質問できる力のことで、「話すのが得意」では不十分です。構造化スキルは理解力に、柔軟な発想力は問題解決力につながります。
スキルを身に付けるポイントはバラバラにではなく、「仮説構築→仮説の検証→問題の理解→解決案の発想→解決案の提示」という問題発見のフレームワークに沿って学ぶことが大切です。この図表にあるスキル名は、実際の場面で個別のスキルをどう使うかを示したものです。今回はヒアリングスキルについてもう少し掘り下げて説明します。構造化スキルについては第2回の勉強会でお話しする予定です。
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