阪神大震災10年目に考えること、するべきこと(前編)何かがおかしいIT化の進め方(22)(1/3 ページ)

1995年に発生した阪神・淡路大震災から10年余が経過した。震災直後には多くの企業や個人が災害対策を検討したが、そのとき考え出した備えはどこまでできているのだろうか。今回は地震対策を中心にした災害対策について、検討する際にその基礎となる要件を考える。

» 2005年12月06日 12時00分 公開
[公江義隆,@IT]

忘れていなくてもやって来る災害への備え

 この10年の間に、社会的にも、国際政治面でも、また自然災害の面でも急速に物騒な時代になった。発生から10年余になる1995年の阪神・淡路大震災直後には、多くの企業で災害対策が検討され、また個人でもいろいろ備えを考えていた人も多かった。しかし、現在、必要性を分かっているつもりでも、備えは具体的にどの程度までできているだろうか。

 阪神・淡路大震災の後、北海道では石油タンクが大火災を起こす十勝沖地震があった。北九州や中越地方でマグニチュード7クラスの直下型地震が発生したが、被災された地域の多くの人たちにとっては、「まさか、自分の住んでいるところが……」ということが率直な感想のようだった。

 中越地震では、「長岡市には防災計画があったが、まったく役立たなかった」(田村 康二「震度7を生き抜く?被災地医師が得た教訓」祥伝社新書)とある。10年前、阪神地域に住むほとんどの人は、この地域に大地震が来るとは思っていなかった。地震発生数日後に「数年前から警告していた」という地震学者や、「予兆はあった。XXXが予兆であった」という地震予知の研究者が出てこられて「いまさら……」と驚いた。

 最近、「今後30年間に、大地震が発生する確率はXX%」などと、一見具体的に見える予測が発表される。しかし行政にとっては予算を取るよりどころにはなっても、われわれにとっては、「晴れ後曇り、ところにより雨」といった天気予報を聞かされているようで、具体的にどう対処すればよいのか釈然としないのが実情だろう。

 東海地震に対してだけは、一応の予知体制が作られている。しかし地震が予知できたという実績はどこにもまだない。直下型地震を引き起こす未知の活断層も少なくないだろう。

 「日本列島は“地震の巣”だ。いままで、よく地震のあったところは“地震の巣”の密集地だから危ない。また、これまで地震の起こっていないところは、歪(ひず)みがたまっているから危ない」という人がいた。この方が何となく分かりやすい。

 広域災害である大地震への対策を考えておけば、そのほかの多くの自然災害への必要な対策はほぼ包含されると思う。水が引くまで現地に入れなくなる問題があるが、広域に社会の機能がまひし、設備が破壊される点で、洪水や津波時などへの対策に、また業務遂行に必要な社内外の人の手当てができなくなるという点で、テロや新種のインフルエンザ流行時への対策にもつながると思う。

 今回は地震対策を中心に災害対策について、検討する際にその基礎となる要件について考えてみようと思う。

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