2005年11月22日(火)、「第2回 問題発見力勉強会」(@IT情報マネジメント/ソフトバンク クリエイティブ共催)が行われた。今回はヒアリングスキル(質問力)強化の鍵となる構造化力についての講義とワークショップが行われた。
株式会社リアルナレッジ 代表取締役
秋池 治
横浜国立大学卒。メーカー系情報システム会社にてシステム企画とシステム開発に従事。その後、ユーザー系企業でデジタルビジネスの企画および社内改革に取り組む。2003年に数名の仲間とともに株式会社リアルナレッジを設立、業務プロセスの可視化やプロセスの最適化により、経験や勘に依存せず業務を遂行するためのパフォーマンスサポートを提供している。著書に『情報エキスパート』(アプライドナレッジ刊)がある。
今回は「PMに生かすコミュニケーションスキル」の中でも、構造化力についてお話ししていきます。この構造化の話は、スッといける人と、なじめない人とがいますが、その中からヒントを1つでも持ち帰ってほしいと思います。「正解はこれだ」ではなく、柔らかめにとらえると入りやすいのではないでしょうか。
さて、「ヒアリング力強化は構造化がポイント」というのが今回のテーマです。ヒアリング力というのは、質問力、つまり聞く力のことをいいます。一方の構造化力は、理解する力のことです。相手の話を「理解して」聞くことができなければ、本当のヒアリング力とはいえません。そのキーとなるのが、「構造化力」です。
この図はソリューション提供の流れをモデル化したものです。「仮説構築」から始まり、「仮説の検証」「問題の理解」「解決案の発想」「解決案の提示(プレゼン)」と行うわけですが、その「仮説の検証」のときに、「ヒアリングスキル」と「構造化スキル」が必要になります。これらは「質問する力」と「理解する力」のことで表裏一体ですから、2つがないと成立しません。
構造化のメリットは、関連が見えることです。企業で使われる資料は個条書きや表形式のものが主流ですが、これでは関連性や重み付けという点では弱いのです。要点とその関連を整理して伝えることができれば、さらに良いのではないでしょうか。それが“構造化”した資料です。
例えば、企業で「組織を見たい」といわれたとき、オフィスを見せても従業員が働いているところを見せても「組織」がどうなっているのかを伝えることはできません。そこで、組織図を作ったりします。これは組織を構造化したものです。
今回お集まりの皆さんは構造化という言葉を知っていますし、どのようなものか分かっていらっしゃいますが、一般の方の多くは知りません。世の中で、構造化できる人は少数派なのです。学校では教えてくれませんから慣れていないのですね。知らない人に図解して伝えていくことの大切さと効用を、頭の隅に入れておいてください。
理解力と構造化力は、比例します。個条書きで理解するのではなく、関連性の強さで理解するからです。構造化とは「話のポイントを押さえること」「各ポイントを関係づけること」で、コンサルタントの生命線です。ヒアリングでの語り手の話は、決して理路整然としているわけではありません。その中で、相手の話の要点が見えてくると、その要点の関連性が分かってきます。日本の教育では、物事を明細にしてゆくこと──ブレイクダウンを学んでいます。構造化はその逆に、物事を束ねていくことで、抽象度を高めていくものです。話のポイントを押さえ、各ポイントを関係付けながら相手の話を聞き、「いま、いったことは〜ということですね?」と相手の話を要約して、構造化していきます。
コンサルタント職の国家資格に「中小企業診断士」がありますが、この資格を持っているからといって、構造化力にたけているかというとそうでもありません。構造化力は、トレーニングして強化していく必要があります。コンサルタントでなくても、構造化力に優れた人たちがいます。
──どんな職種の人たちだと思いますか。
会場 システムの上流工程の人ではないでしょうか。
──そうですね。われわれのようなコンサルタントになったら、活躍されるかもしれません。ほかには?
会場 医者なども。
それは、名医ですね。ヒアリング能力、ソリューション能力のない医者の話を以前書いていますので、ご参考まで。
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【その“ソリューション”は本物か?】連載:問題発見能力を高める(1)(@IT情報マネジメント)
意外なところでは、雑誌の編集者ですね。要点を見るのがうまい。@IT情報マネジメントの記事には要約が付いているのですが、4000文字程度の原稿を500文字でまとめています。元の文章からズレないようにまとめるには、要点をつかむ必要があります。編集者に「コンサルにならないか」と誘っていますが、いまのところ成功していません。
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