プロジェクトを管理しないという発想自己組織化プロジェクトの育て方(1)(3/4 ページ)

» 2005年12月09日 12時00分 公開
[山根圭輔,アクセンチュア]

3. これまでのプロジェクト管理法に立ちふさがる現実〜CMMIが最適解?

 ここまでは、感覚的に当たり前のことをあえて見直しました。すなわち、

『粒同士のネットワークの爆発が複雑で、これが手に負えない問題プロジェクト発生の引き金になっている』

 とすると、それに対抗する手段には、いったいどんなものがあるでしょうか? 最も有名な手段の1つとして、CMMIがあります。カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所(SEI)が開発した、ソフトウェア開発プロジェクトのためのベストプラクティスモデルです。1〜5のレベルでシステム開発組織の成熟度を定義しており、各レベルの段階を追いながら組織の成熟度を上げていくことができるのがポイントです。

 詳細な説明はCMMIの解説記事に譲りますが、大まかにいって、レベル1からレベル4までは、『いかに最適化された確固たる開発プロセスを構築するか』ということと、『いかに最適化された開発プロセスから定量的なデータを得て、分析するか』という2点に目的が絞られているといっていいでしょう。

 それでは最も高いレベル5は何かというと、最適化されたプロセスを状況に応じて漸進的に改善することができる、と定義されています。すなわち図にすると以下のようになるでしょう。

ALT 図4 最も高いレベル5は

 まず、混沌とした無秩序の状態(レベル1の状態)から、最適に秩序のあるプロセスを定義し、運用できるようにします(レベル2〜4の状態)。

 そのうえで、変化に対応していけるよう、プロセス改善を行います(レベル5の状態)。もちろん、過去に最適化された状態から、新たなビジネス環境の変化に対応する形で最適化するよう改善します。2度と混沌の方向に進むことはありません。

CMMI導入時にぶち当たる2つの問題

 非常に理にかなったやり方ですが、CMMIを導入するに当たって、現実のところ2つの難しい問題にぶつかりがちです。

 1つは、混沌とした無秩序の状態から秩序の状態へのハードルが非常に高い、ということです。もちろんCMMIでもこのハードルを少しでも下げるために、レベル2から3、4と少しずつハードルを上げていく工夫をしているわけですが、根本のところ、最適化された至高のプロセスを目指しているため、レベル2、3のハードルは高め、高めになっている感は否めません。

 もう1つは変化に対応する、という重要な段階がレベル5という最終段階になっていることです。このことは、変化が激しい分野、特にインターネット関係の分野などでは致命的です。3カ月先の技術トレンドすら予想もつかないような状況で、いまの技術に最適化するプロセスをまずきっちり定着化しましょう、といってもあまりに現実感がないでしょう。

 この2つの難しい問題はCMMIにとって致命的か、というとそうでもありません。裏を返せば、混沌から秩序への高いハードルを越える体力があり、大きな環境の変化が乏しい分野であれば、この最適化プロセスは非常に有効であることがさまざまな実例から分かっています。

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