ビジネスモデリングと“見える化”のいま「ITアーキテクト塾」レポート(1)(1/3 ページ)

@IT「ITアーキテクト」フォーラム主催の「ITアーキテクト塾」。第1回は、いま注目される「ビジネスプロセス・モデリング」について、特にBPMN(Business Process Modeling Notation)の観点から3人のトップITアーキテクトがその有効性を論議した。

» 2005年12月27日 12時00分 公開
[トレッフェ 「岩崎史絵」,@IT]

この1年で注目を集めた「ビジネスモデリング」

 もともとモデリングとは、システム開発の対象となる業務の構造やシステムの構造、そして業務とITのかかわりなどを記述することだ。その表記法はさまざまで、例えば業務プロセスの中でどのようなデータが必要になるかを記述するDFD(Data Flow Diagram)や、データ構造を表すE-R(Entity-Relation)図、そして業務プロセスとエンドユーザー、システムの関係を記述するUMLなどが挙げられる。こうした意味では、古くからあるシステム開発の技法の1つであり、新分野というわけではない。

 これまでのモデリングは、どちらかというと「開発」のための技法であり、ITの視点から業務構造を図式化するのが一般的だった。それに対し、昨今のプロジェクトではまず全体的なビジネスの流れを整理して、そのうえでどこをIT化すべきか考え、開発に携わるケースが増えているという。ビジネス全体の流れを押さえ、ITへとブレイクダウンしていく際に使われるのが「ビジネスモデリング」だというのだ。

 こうした背景から開催された第1回「ITアーキテクト塾」では、ビジネスモデリングに特化した表記法「BPMN」について、参加した40名以上のITアーキテクトとともに、その有効性や従来との違いについて議論を進めていった。

BPMN誕生の理由と3つの役割

ALT 日揮情報ソフトウェア 技術本部・モデリング技術部 明庭聡氏  

 第1部は、@IT「ITアーキテクト」フォーラムの連載「BPMNを活用したビジネス・プロセスモデリング」を担当していた日揮情報ソフトウェア 技術本部・モデリング技術部 明庭聡氏の講演で幕を開けた。

 明庭氏は普段データモデリングを中心にコンサルティング活動を行うほか、BPMNを通じてビジネスとITを“つなぐ”ことに関心を抱いているという。「ビジネスとITの融合を目指し、迅速なPDCAを回していく必要から誕生したのがBPMNだ」と明庭氏は語る。

 ビジネスとITを融合するには、ITがビジネス上の目的を達成するかどうか、KPIを決めて常にモニタリングすることが望ましい。その結果を反映し、改善が必要であればシステムや人間系のプロセスを含め、すぐ改善する。特に最近のように、ビジネス環境の変化が激しい時代であれば、こうしたPDCAサイクルが速ければ速いほど競争優位に立つわけだ。

 BPMNの利点は2つある。1つは標準に基づいた共通言語であるということ。つまりビジネスを考えるべき経営者やアナリストと、開発側のスタッフが共通で扱えるということだ。そのため「従来のUMLに比べ、構成要素も単純という特長がある」と明庭氏は説明する。

  もう1つは、BPMNで設計したフローはそのままBPEL(Business Process Execution Language)というプロセス実行言語に落とし込めるという点だ。そしてBPEL自身もWebサービスなど連携技術の標準仕様に基づいているため、BPMNで記述したプロセスがそのまま全体的なSOA(Service Oriented Architecture)へと持っていくことができる。こうしたメリットにより、ビジネスプロセスのプランニング、実行、チェック、改善策というPDCAサイクルをスムーズかつスピーディに回すことができるのだ。

 「個人的な考えでは、PDCAサイクルを潤滑に回すには、ビジネスとITを結ぶ3つの役割が必要になると思う。具体的には、ビジネスプロセスを可視化するビジネスアナリスト、次にその結果から詳細図へと落とし込むプロセスデザイナー、そして開発面の責任を持つシステムアーキテクトという3つの技術者が必要になり、BPMNもそれぞれ可視化、詳細化、そして実行言語への橋渡しという3つの役割を担うことになるのではないか」と明庭氏は締めくくった。

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