ビジネスモデリングと“見える化”のいま「ITアーキテクト塾」レポート(1)(3/3 ページ)

» 2005年12月27日 12時00分 公開
[トレッフェ 「岩崎史絵」,@IT]
前のページへ 1|2|3       

UMLにあってBPMNにない“モノ”とは

ALT マイクロソフト エンタープライズプラットフォーム本部 プラットフォーム戦略部 安藤浩二氏

新野 ここでBPMNに特化して話を進めたいのですが、モデリング=可視化という作業の中で、BPMNが持つインパクトにはどのようなものがあるのでしょうか。

明庭 BPMNの特長は「実行言語・BPELにつながる標準仕様である」ことです。またOMGでは、より上流の「モチベーション・メタモデル」など、戦略にかかわる部分やビジネスルールのモデル化を進めているので、上流から下流までよりシームレスに連携できます。

安藤 BPMNの場合、UMLで使われている要素をより簡素化しているので、経営者の人にも使いやすいでしょう。ビジネスユーザーと開発者が同じ共通言語で会話ができるというのは、非常に良い傾向にあると考えています。

山岸 BPMNは表現力があるので、UMLのアクティビティ図で足りなかった部分を補えています。これはいいことだと思います。

ALT 豆蔵 取締役副社長 山岸耕二氏

 ただ、BPMNがUMLより扱いやすいかという課題については、一概には判断できません。例えばアクティビティ図はUMLの方が簡素で分かりやすいですし、ビジネスを静的モデルと動的モデルで表現するにはUMLが適しています。

 最大の課題は、UMLがOMT法やブーチ法などの開発方法論から誕生したものに比べ、BPMNは表記法ありきで誕生したという点です。UMLについては開発工程の中で、どんな粒度でどんなポイントに注意してモデリングすべきかガイドがあるのですが、BPMNにはそれがありませんので、この整備が急がれるのではないでしょうか。

明庭 開発方法論やガイドの不在は、私自身もBPMIでも大きな課題として認識しています。表現力についても、やろうと思えば自分で作った表記も仕様に入れることができるので、どの段階でどこまで詳細に落とし込むか事前に決めておく必要があります。方法論やサンプルモデルの開発・普及、コンテンツの充実などについては今後の大きな課題ですね。

明庭 それについては、BPMNを策定している団体BPMI(Business Process Modeling Institute)でも大きな課題として取り上げられています。方法論やサンプルモデルとしての普及、コンテンツの充実などはこれから整備していかなくてはならない分野ですね。

新野 マイクロソフトでは、BPMNについてどのような見解をお持ちですか。

安藤 実は当社では、ビジネスアナリストやITアーキテクト、開発者などはそれぞれ仕事内容が違うので、異なる表記法を使うのはしかるべき、という立場を取っています。なので、BPMNやUMLあり、ネットワーク構成を表現する記述言語など、局面で使い分けていくべきものでしょうというスタンスです。

  実は今月、開発環境の最新版「Microsoft Visual Studio2005」をリリースしますが、その中ではUMLツールもあり、特定領域において必要な表記法は分かりやすいものがあったらそれを使いましょうと提唱しています。モデルがちゃんと実行コードに落ち、ソフトウェアが動くことが重要なので、標準化策定には関与していますが、特定の表記法だけに肩入れしているわけではないです。ちなみにVisual Studio2005では、モデルからコードへの落とし込みと、コードの変更をモデルに反映するラウンドトリップを実現しているので、モデルと実装への融合が一段と進むと思います。

結局BPMNは何ができるのか

新野 最後に、BPMNは何ができるのかについて考えてみたいと思います。

明庭 BPMN、そしてBPELができるのは非常に明確で、「ワークフローやコミュニケーションの記述・実行・制御」です。しかしBPELはOracleやSAP、主要アプリケーションサーバなどさまざまな製品が対応しているので、モデルを書けば実際に流れるフローまでは即実現できます。

山岸 そして次に、BPELでつなぐ「サービス」そのものの開発が重要になってきますね。そこは従来のように、UMLなどでシステム化対象範囲を切り出し、コンポーネント開発をしていくことになると思いますが、その前に「どんなサービスが必要なのか」を可視化しなくてはなりません。そこでエンドユーザーの要求やビジネスプロセス全体を「見える化」するためにBPMNは非常に有効だと思います。

安藤 当社のスタンスははっきりしていて、サービス部分などの実装についてはVisual Studio2005という開発環境を用意しています。またBPMNと「Microsoft Office Visio 2003」を連携するツール「ITpearls Process Modeler for Microsoft Visio」が日揮情報ソフトウェアさんから提供されており、モデルの策定からBPMN、BPELへのシームレスな変換も可能です。またオーケストレーションの実行環境も用意しているので、BPMNのモデル策定から実行までが非常に容易です。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ