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» 2006年01月27日 00時00分 公開

情報マネジメント用語辞典:HACCP(えいちえいしーしーぴー)

Hazard Analysis and Critical Control Point / 危害分析および重要管理点 / ハサップ / ハセップ / ハシップ

[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 食品製造における危害(食中毒や異物混入など)の発生を予防することを目的にした衛生管理システムのこと。食材・食品の国際貿易の増加に伴って、国際標準として世界的に導入が進んでいる。

 HACCPは、食品製造・加工・流通事業者における食材の入荷から加工、出荷・提供までのすべての工程で、事前に危害(hazard:人間の身体・生命に害を及ぼす原因)の発生可能性を分析し、それを防止(予防・消滅・許容レベルまでの減少)するうえで重要な工程を重要管理点(CCP)として特定して、それを常時監視することによって、危険発生を未然に防止することを意図したシステムである。

 CCPごとに管理基準、監視方法、基準を外れた場合の対処方法を定め、安全確保のために行うべき手順を確実に行っているかどうかを監視・記録し、定期的に検証を行う。もしそれらが不十分であると判明した場合に、速やかな改善措置を取る方法なども定める。

 食品衛生管理の方法は、HACCP以前は一般に最終製品の検査(抜き取り検査)に頼っていたが、HACCPはTQCISO 9000と同様の“プロセスアプローチ”で、食品製造過程で予防措置を講じることにより、最小限の検査で製造ロット内の製品の品質を保証しようとするものである。

 HACCPは、NASA(米国航空宇宙局)の有人宇宙飛行計画における宇宙食開発の中で生み出された管理手法を原型としている。1959年に宇宙食の製造を委託された総合食品メーカー・ピルスベリー社は、NASAからほぼ100%の安全保証を求められた。しかし、抜き取り検査で保証を行おうとすれば検査対象となる病原微生物は膨大な数に上り、製品のほとんどを検体として使ってしまう事態に直面した。そこで、ピルスベリー社のH・E・バウマン(Howard E. Bauman)博士の研究チームは事前のプロセスで予防的に監視を行うシステムを考案した。

 その概要が同社、NASA、米陸軍ネーティック研究所の共同開発として1971年に食品保護会議で公表されると、1973年にはFDA(米国食品医薬品局)で実地に試みられ、低酸性缶詰食品のGMPに導入された。その結果、NAS(米国科学アカデミー)は有効性を高く評価し、1985年に行政機関に法的強制力のあるHACCPシステムの採用を勧告した。

 国際的にもICMSF(国際食品微生物規格委員会)に検討委員会が設置され、1980年にWHO(世界保健機構)と合同で報告書を作成し、HACCPが将来の食品微生物管理の方向を示すものだと勧告した。

 米国内では、1987年に米国農務省やFDAなどの4つの政府機関ならびに大学、民間の専門家をメンバーとするNACMCF(米国食品微生物基準諮問委員)が設置された。同委員会は1989年に報告書を提出、HACCPの法制化を推進する方針を提言するとともに「HACCP7原則」を示し、HACCPはここに体系的なものとなった。

 一方、ICMSFは1988年にWHOに対して国際規格にHACCPを導入することを勧告、FAO(国連食糧農業機構)/WHO(世界保健機構)合同の食品規格委員会であるコーデックス規格委員会(CAC:Codex Alimentarius Commission)がNACMCF版HACCPを基に国際標準化作業を行い、1993年に「HACCP適用のガイドライン」を採択した。1997年にはその改訂版である「HACCPシステムとその適用ガイドライン」が採択されている。

 WTO(世界貿易機関)では加盟国に対して、コーデックスHACCPの順守を求めており、これを受けて各国・各地域ではHACCPシステムの法制化を始めている。

 日本では1995年の食品衛生法改正(第7条3項)で創設された「総合衛生管理製造過程の厚生労働大臣承認制度」に、HACCPシステムが組み込まれた。これは、政令で定める食品の製造・加工施設を事業者の任意申請を受け付け、その設備が基準に適合するかを書類審査、現地審査を経て承認する制度である。当初は事業者の自主管理を促すための制度だったが、承認施設で重大な食中毒事件が発生したこともあり、2003年の食品衛生法改正で3年ごとの更新制となった。

 この総合衛生管理製造過程の制度や基準のことをHACCPと呼ぶこともあるが、実際の内容はHACCPシステムと一般衛生管理マニュアル(GMP)を組み合わせたもので、施設・設備の保守管理、作業従事者への教育および管理、防虫防そ対策、製品回収時のプログラムなどを含めた総合的な衛生管理マニュアルを整備し、それを適切に実施することを要求している。一部業界団体では公正取引委員会の承認を受け、同制度の認証を受けた施設で製造された製品に付ける「HACCPマーク」を制定している。

 承認制度は、現在のところ一部品目でのみの実施だが、厚生労働省ではすべての食品の衛生管理にHACCP導入を奨励しており、順次対象品目の拡大が予定されている。現在同制度の対象となっていない品目については、日本品質保証機構(JQA)や業界団体によって自主的にHACCP認証制度などを行う動きも見られ、加工食品・食品流通・大規模調理施設・外食産業など、多くの企業で自主的な導入が進んでいる。

 また、農林水産省が作成した「衛生管理ガイドライン」もHACCPベースで、同省ではJAS(日本農林規格)対象品目について順次HACCP採用を求めていくことを検討している。このほか、都道府県レベルでHACCPの考え方に基づいた、中小事業者向けの衛生管理基準、管理認証制度などが作られている。

 2005年9月には、HACCPシステムをISO 9001ベースのマネジメントシステムとして運用するための要求事項を規定したISO 22000:2005「食品安全マネジメントシステム?フードチェーンの組織に対する要求事項」が正式発行している。

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