コミュニケーション・ツールは、企業の情報インフラとして極めて重要な位置を占める。ツールの特性によって、コミュニケーションスタイルが規定されるため、組織の目標や解決したい課題を踏まえて、適切に導入していく必要がある。今回は、コミュニケーション・ツール導入を成功させる方法論を整理していく。
4カ月にわたる連載を通じて、コミュニケーション・ツールの分類、メリット/デメリット、およびいくつかの活用事例を紹介してきた。今回は最終回として、これまでの内容を踏まえながら、実際にどのようにツールを選定・活用していけばよいのか、方法論をまとめていきたいと思う。その手順の概略は下記のとおりである。
順を追ってみていこう。
第1回で紹介したとおり、企業内コミュニケーションに関して課題はすでにある程度把握できており、実際にツールを導入する段階に進んでいる企業もある。しかし、「課題を解決した結果のイメージはある(あった)のか?」「なぜコミュニケーションを活性化したい、させなければならないのか?」は、あらためてもう一度考えてみるべき項目だといえる。導入済みのツールを急に廃棄するのは現実離れしており、現状は現状として、見直し・検討は再度ゼロからしてみるべきだろう。
再考すべき点【再掲】
-ツールを全社導入する必要は本当にあるのか?
-コミュニケーションを活性化するとどんないいことがあるのか?
-そもそも何が課題なのか、どうすれば根本的に解決できるのか?
-コミュニケーションが不足していたら何が問題なのか、解決したらどうなると思うか?
この段階での注意点は、「ツールの導入」そのものは目的にはならいということである。「どんなツールを導入したらよいのだろうか」という問題は、課題を解決するための具体的施策を実行するうえで発生し得るが、それ自体は課題にはならない。
課題を設定したら、続いて現時点で存在するツールと使われ方を調査、整理する。例えば下記のようなものが挙げられるだろう。
なお、第3回では電子メールの例を紹介した。数値化することで、「みんな使っているはず」「メールが大量に来て困る」という感覚的なツールの活用度が良しあしすべてを含めて、具体的かつ問題解決の必要性を実感できるものになる。コミュニケーションにおいて、どのツールが活用され、どんな情報を減らしたり増やしたりすればよいのかが明確になるのである。さらには、導入後の評価を行う際にも、ここで使った項目や測定結果が利用できる。
目標や解決したい課題が解決した後の状態として、あるべき姿を検討する。理想の状態だけを追い求めるのではなく、セキュリティやコンプライアンスを考慮した、活用のための社内ポリシーを制定しておくことも必要である。
なお、運用してみるとポリシーの欠陥が表面化したり、逆に項目が細か過ぎて過剰であるということが発生するかもしれないので、本格的な運用前にテスト期間を設けたり、運用後にも、ツール導入効果の測定とともにポリシーの内容について再評価する期間を設けるとよいだろう。いわば法改正や規制緩和(逆に規制することもあるだろう)のようなものである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.