クリティカルチェーン(くりてぃかるちぇーん)情報システム用語事典

critical chain

» 2006年03月19日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 プロジェクトなどにおいて、それを構成する各作業の実行順序を考えたとき、「作業工程上の従属関係」と「リソースが限られているために発生する従属関係」の双方を考慮した上で、最も時間的に長く掛かる作業の連鎖のこと。作業完了に要する所用期間を決定する。

 ネットワーク図上の“最も長い作業の経路”は通常、クリティカルパスと呼ばれる。これは作業工程上の依存関係(例:設計が終了してから生産を開始)のみを考慮に入れたものである。これに対して、リソース(人・設備・協力会社など)が作業量に対して十分ではなく、そこに作業が集中した場合、作業を順次行わなければならないという従属関係(例:製品Aの設計が終了してから、製品Bの設計を開始)が発生する。この2つの従属関係の考慮に入れて、実際の作業所用期間を決めている最も長い作業の流れ(待ち時間含む)のことをクリティカルチェーンという。リソース競合がない場合は、クリティカルチェーンはクリティカルパスと同じになる(なお、PMBOK第3版からは、プロジェクトスケジューリングではリソース競合に配慮することが前提とされるようになったので、その意味ではクリティカルチェーンとクリティカルパスは同義語といえる)。

タスク3と4を並行作業とする日程計画にしていたとしても、リソース競合を起こしている場合、実際にはこの2つのタスクは同時実行できないため、プロジェクトの完了時刻はクリティカルパス(太線)ではなくクリティカルチェーン(破線)に依存する タスク3と4を並行作業とする日程計画にしていたとしても、リソース競合を起こしている場合、実際にはこの2つのタスクは同時実行できないため、プロジェクトの完了時刻はクリティカルパス(太線)ではなくクリティカルチェーン(破線)に依存する

 TOCの提唱者であるエリヤフ・M・ゴールドラット(Dr. Eliyahu M. Goldratt)博士が、プロジェクト型業務が計画どおりに進まない理由を探ったところ、「リソースの競合」が根本原因であることを突き止めた。すなわち、複数のタスクあるいはプロジェクトが同一時期に同一のリソースを使おうとして奪い合いとなり、奪い合いに敗れたタスク/プロジェクトは予定どおりに開始できないという現象である。

 近代的なプロジェクトマネジメント理論はPERTCPMに由来するが、これらの手法は軍事や建築を対象として生まれたもので、「軍事競争に勝つため、予算上の制約よりも納期を優先する」「リソース(作業者)を雇うことは難しくない」というタイプのプロジェクトであった。そのためか長い間、“リソース競合”という制約条件は省みられることはなかった。

 ゴールドラットは「Critical Chain」(1997年)でその問題を指摘、TOCの理論をプロジェクトマネジメントにするTOCプロジェクトマネジメントクリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント)を提唱した。

参考文献

▼『クリティカルチェーン――なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?』 エリヤフ・ゴールドラット=著/三本木亮=訳/津曲公二=解説/ダイヤモンド社/2003年10月(『Critical Chain』の邦訳)


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