アドレス枯渇 そのとき何が起こるのかIPv4アドレス枯渇に備える(2)(2/2 ページ)

» 2006年06月15日 12時00分 公開
[近藤 邦昭(JPNIC 番号資源利用状況調査研究専門家チーム チェア),@IT]
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一般ユーザーや企業ユーザーにとっての枯渇対策とは

 報告書では、枯渇予測や消費動向などからいくつかの予測を行っている。これらの予測は、枯渇への危機感を煽るためのものではなく、むしろ現状を正しく把握し、その状況から読者が今後どのような行動を起こすべきかを考える材料にしてもらうことを目的としている。

 報告書では、この考えに基づき、考察結果から、レジストリ、インターネット接続プロバイダ、インターネット利用者、IP技術開発者それぞれに対して提言を行っている。また、インターネット利用者は、さらにサービス提供者、企業ユーザー、そして一般ユーザーに分類している。

 ここでは、これらの中から企業ユーザーと一般ユーザーに対する提言について解説する。

 まず一般ユーザーは、基本的に何もする必要がない。一般ユーザーとは、家庭での利用者などを対象としており、これらの人々は一般的にインターネットに関する知識を持つ必要がない。一般ユーザーは、インターネットがIPv4であるかIPv6であるか、ましてやインターネットがどう動いているかなどについて気にしていない。これらの人々は、インターネットサービスやネットワークが自然に移行していくにしたがって、知らないうちにIPv4からIPv6に変わっていくべきだからである。

 次に企業ユーザーであるが、ここでいう「企業ユーザー」とは、企業や組織における情報システム部門の担当者と読み替えて問題ない。

 企業ユーザーに対する提言のポイントは、「今後、新たなネットワーク設備を導入する場合は、IPv6に対応した機器を導入すべき」という点である。

 一般的な企業の設備の償却期間は約5年である。この償却期間にIPv4アドレスが枯渇することは十分に考えられる。こうなった場合にIPv4のみしかサポートできない機器は、償却期間を待たずに利用できなくなる可能性がある。このような無駄をなくすためにも、IPv6をサポート可能、または、将来的にIPv6のサポートが約束されたソフトウェアを含む機器を購入しておくべきと考える。

 補足すると、このようなことを考慮すべき機器は、インターネットに接続が必要な機器のみと考えて良い。昨今では、セキュリティ意識の向上から、企業内ネットワークの一部をインターネットから切り離しているところも少なくない。このような隔離されたネットワークは、インターネット全体の問題からも隔離されている。つまり、外界でIPv4が枯渇しても、隔離されたネットワークでは、IPv4を使い続けても全く問題ないといってよい。しかし、これらの隔離された機器がインターネットのような外界とコミュニケートしようとした場合は、それらの機器がIPv6をサポートするか、その中間機器で通信を媒介するような方策が必要となる。このようなことも踏まえ、企業のネットワーク担当者は、今から十分考慮されたネットワーク増強計画を講じていくことが望ましい。

 最後に繰り返しになるが、報告書や本記事の内容は、あくまでも読者にIPv4アドレスの枯渇について自分のこととして考えていただくための材料である。特に動向予測などについては非常に単純な予測になっており、ここで述べたことが予言者のごとく的中するとは思っていない。

 最後に、この記事が、読者にとってIPv4アドレスの枯渇という事態を少しでも身近なことと感じるきっかけとなり、今後のネットワーク関連業務の助けになることを期待している。

著者紹介

▼近藤 邦昭(こんどう くにあき)

1970年北海道生まれ。神奈川工科大学・情報工学科修了。1992年に某ソフトハウスに入社、おもに通信系ソフトウエアの設計・開発に従事。

1995年ドリーム・トレイン・インターネットに入社し、バックボーンネットワークの設計を行う。

1997年株式会社インターネットイニシアティブに入社、BGP4の監視・運用ツールの作成、新規プロトコル開発を行う。

2002年インテック・ネットコアに入社。2006年独立、現在に至る。

日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ(JANOG)の会長も務める。


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