連載
» 2006年06月15日 12時00分 公開

IPv4アドレス枯渇に備える(2):アドレス枯渇 そのとき何が起こるのか (1/2)

IPv4アドレスの枯渇が発生すると、IPv4を延命させようとする動きが発生することが考えられるほか、IPv4とIPv6の併用に伴う混乱が予想される。企業ユーザーにとってのIPv4アドレス枯渇に向けた対策とは何なのだろうか。

[近藤 邦昭(JPNIC 番号資源利用状況調査研究専門家チーム チェア),@IT]

 今回は、日本のIPv4アドレスの消費動向を考察し、これを踏まえてアドレス枯渇の際に考えられるいくつかの事象について解説する。さらに、インターネット利用者が枯渇に向けて準備しなければならないいくつかの事柄について解説する。

日本におけるIPv4アドレスの消費動向

 日本は世界の中でも大きくインターネットが普及した国であるが、レジストリに登録されているIPアドレスの割り当て状況を見ると、全体の59%が米国、日本は6.5%と大きな差がある。これは、米国が古くからインターネットを利用してきたことに起因する。では、最近のアドレス消費動向はどうなっているのだろうか。ここでは日本における動きについて解説する。

ALT JPNICにおけるIPv4アドレスの割り振り件数の推移(JPNICニュースレターNo.31より)

  まずは、JPNICにおける全体的な割り振り動向を見てみよう。このグラフにはいくつかの波が見られるが、大きく割り振りが行われている部分でも、特定サービスに起因する割り振りではないことが調査の結果分かっている。このため全体的には、指数関数的な割り振り増が続いていることが分かる。一方、FTTHやADSLなどの加入は、すでに加速が鈍化してきている。つまり、1ユーザー当たりのアドレス利用数が伸びてきていることになる。

  このように、インターネット加入者の伸びはすでに鈍化傾向に転じているが、インターネットを利用したサービスの多様化がアドレス利用を促進していることがうかがえる。この傾向が続けば、今後もアドレス需要は、これまでのように指数関数的に伸びることが予測できる。

アドレス枯渇時に起こる事象

 「枯渇」を考えるにあたって、この言葉を明確に定義する必要がある。本連載で取り上げているJPNICの報告書「IPv4アドレス枯渇に向けた提言」(PDFファイル)では、「枯渇」を「RIRのアドレスプールの割り振りが終了した時点」と定義し、この時点を「枯渇点」としている。実際にはRIRは5つあり、それぞれの枯渇が時間的に同時になる確率は低い。このため報告書では、地域ごとの割り振り対象者に不公平を及ぼさないような形で枯渇を迎える努力をすることを、各RIRに期待している。

 また、この報告書では、枯渇の時期についてはほかの枯渇予測を参照するにとどめており、枯渇点の前後でどのような傾向が発生するかを示すことに注力している。これは、枯渇点に達する時期は今後の割り振り/割り当て動向によって変化するが、その前後の動向は大きく変化しないという前提に立っているためである。

 さて、報告書ではこのような定義をした上で、枯渇前と枯渇後でどのようなことが起こり得るかについていくつかの考察を述べている。重要なポイントは以下の3つである。

  • アドレス枯渇に向けて、アドレス寿命を延ばす動きの発生
  • 枯渇点を迎えるにあたって公平にアドレス分配を終了できるような準備
  • IPv4/IPv6混在型インターネットにおける混乱

 IPv4アドレスを用いたインターネットは、もはやインフラとしてのネットワークとなりつつあり、これを次世代のインターネットに移行するにあたっては、いくつかの混乱があることが当然予測される。このため、現行のインターネットを長く使い続けたいという意思が働くことは自然なことといえる。このような延命のための動きが良くないこととはいいがたいが、現在見えているアドレス需要の伸びやアドレスの残量から考えれば、延命の有無とは無関係に、いずれはIPv4アドレスの枯渇が発生すると予測できる。

  枯渇点を迎えた時点で、次世代インターネットの準備が全く整っていなければ、延命の作業は必須となる。しかし、次世代インターネットとしてIPv6を用いたネットワークを用いることがすでに広く認知され、移行の準備も進められている。このため、IPv4の延命措置を施す必要性は低い。

  むしろ、枯渇点を迎えるにあたって、IPv4でしかサービスしていないようなインターネットサービスに利用するアドレスを確保するための「駆け込み需要」が発生し、現行の割り振り/割り当てルールではサポートが難しい状況のまま無造作に枯渇点を迎える可能性がある。このため、枯渇点を迎えるにあたっては、アドレス利用者に対して公平にアドレスが分配され、混乱なくアドレス分配が終了するようなルール作りを含めた準備が必要である。

  このような努力の後、IPv4インターネットはIPv4アドレスの枯渇点を迎える。しかし、枯渇点を過ぎてもIPv4アドレスが消滅するわけではないため、IPv4インターネットはこれまでと同じように利用される。この時点で問題となるのが、IPv4/IPv6混在型ネットワークでの混乱である。

  IPv4とIPv6は「IP」という意味では同様な技術を用いたネットワークであるが、プロトコルの構成上、全く別のネットワークであると理解してほしい。つまり、IPv4とIPv6には相互接続性がないといってよい。また、IPv4からIPv6への移行初期段階では、IPv6ネットワークは、IPv4ネットワークの中に点在する形であり、移行が進めばその逆となる。

  詳しい動作については報告書に詳細な記載があるが、ポイントは、IPv6ネットワーク上のみでサポートされているホストまたはネットワークから、IPv4のみのサービスが利用できないことである。

  IPv4のみをサポートしているホスト・ネットワークは、IPv6の割り振りや割り当てがすでに開始されていることから、IPv4に加えてIPv6をサポートすることは可能である。しかしIPv6のみをサポートしているホスト・ネットワークは、IPv4アドレスが枯渇していることを考えれば、ネイティブにIPv4をサポートすることは論理的に不可能である。しかし、IPv4のみをサポートするサービスはしばらくは残ると考えると、IPv6のみしかサポートしないホスト・ネットワークからIPv4ネットワークへアクセスできる方策を講じておくことは、IPv4からIPv6へのスムーズな移行のために必要である。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ